第261話 嫁ズからのお願い
「クラリス様と何かあったの?」
部屋に戻った俺に、すかさずセレナが聞いてきた。
「これからのことでいろいろと…な」
「何か問題でもあった?」
「何で?」
「そんな顔してるから笑」
「…あのさ、俺、クラリスに提案してみたんだ」
「何を?」
「髪をバッサリ切って、聖女ではなくクラリスとして生きてみないかって…」
「「…」」
「そしたら考え込んじゃってさ…。俺は女性の髪の毛のことをちょっと軽く考えてたかなって思って…」
「髪が短いボクが言えることじゃないけど、女性にとって髪の毛は命って言えるくらい大事なものだね」
「確かにそうよね。自分らしくあるためには必要なものだよね。でも、今のクラリス様には変化があってもいいような気がするな…」
「…」
シェリルとセレナの言葉に対して、俺はなにも言えなくて、ただ黙っていた。
「あのさ、シーマ。クラリス様は今日予備の部屋に1人で寝るんだよね?」
「あぁ、その予定だけど」
「だったらさ、シーマがそっちに寝て、クラリス様と代わってくれない? 私とシェリルでいろいろと話してみるよ。いいよね、シェリル?」
「もちろん。むしろ良い考えだと思うよ。一緒に寝れば仲良くなれるだろうし」
「セレナ…シェリルも、ありがとう」
「いいのよ、別に。私たちだってそれなりに考えてることがあるからね…」
「ん?!」
「まぁその辺は女の事情ってことにしておいて。それよりもさ、シーマ?」
「何だい?」
「この短時間で『クラリス様』から『クラリス』呼びになったわね。何があったらそんな急に仲良くなれるのかしらね?」
「そ、それは…」
セレナのいきなりの追及に俺は戸惑ってしまった。
別に悪いことしてるわけじゃないが、エルピスのところで時間を止めてお話ししてたなんて言ったところで、現実離れしていて信じてもらえるか分からないんだよな。
俺がどう答えればいいか迷っていると、しびれを切らしたようにセレナが喋り出した。
「まぁいいわ。エルピス様絡みで言えないこともあるんだろうしね。言えるようになったら言ってくれればそれでいいよ。でも…」
「でも何?」
「あまり嫁を増やさないで欲しいかな」
「ボクからもそれはお願いしたい!!」
「…」
俺はまたまた何も言えなくなってしまった。
「オルティアの貴族にもなっちゃったし、ある程度は覚悟してるけど、それでも本音としては増やしてもらいたくない」
「少なくともボクたちが納得しないような人はダメだからね」
「あぁ、はい。そうですよね...。それじゃあクラリスと変わってくるよ」
俺はこれ以上ここに居ても怒られるだけのような気がしたので、そそくさと部屋を出ていった。
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