第242話 作戦会議



エルブライトからグレイスまでは馬車なら約2日の距離らしい。遠くもなく近くもないのだが、その間に聖女救出のプランを立てなければならない。


しかも、今回は教会の地下室に聖女が監禁されているのがわかっている分、探す手間は省けるものの、教会という性質上の問題が救出を困難にさせるのだ。


誰でも入れるが、逆に言えば誰にでも見られてしまう。

誰にも見つからずに救出など出来るのだろうか。


普通に考えたら、教会内で人を殺すわけにはいかない。

犠牲を出さずに済むなんてことはありえないようにも思える。




「聖女クラリスの救出方法で何か考えてることはあるのかい?」



その日、野営での夕食後にクリスさんが俺に聞いてきた。



「いや、それが何も…。聖女クラリスがグレイスの教会の地下に監禁されているのはわかっているんですが、そこまでどう辿り着けばいいのか…」


「見張り番とかもいるだろうしね。しかも教会内っていうのがタチが悪い。よっぽどの大義名分でもない限りは、剣を抜くことさえ許されないからね」


「困りましたね…。パッと行って連れ去ってくるだけなら楽なんですが…」


「「「「「はぁ…」」」」」



みんなが一斉にため息をつく中、ノエルさんが話し出す。



「ねぇ、シーマくん? テレポは自分の目で確認出来るある程度の距離を移動できるのよね?」


「えぇ、そうですね」


「おそらくだけど、それは目で見ることによって場所が特定できるからだと思うの」


「…」


「だから、サーチで聖女の居る場所が特定出来れば、目に見えない場所でもテレポで移動出来るんじゃないかしら」


「なるほど。試してみる価値は十分にありますね」



さすがはノエルさん。

魔法のことを良く知っていないと出てこない意見だ。

これが出来たら、比較的楽に救出が出来るかもしれない。



「じゃあ、私が部屋に戻ってみるから、サーチだけで場所を特定してテレポで移動してきてくれる?」


「わかった。早速やってみよう」



フィリア王女が部屋に戻った。

俺はサーチでフィリア王女のいる場所を特定して…



「テレポ」


「いやーん❤」


「?!」


「シーマさん、夜這いなんて大胆なことするのね❤」


「…フィリア王女。なんでベッドにいるんですか?」



そう。

俺は罠にはめられた。


フィリア王女は部屋のテーブルとかじゃなくて、あえてベッドで俺を待ち構えていたのだ。

すると、どうなるのか。

当然俺はベッドの上にテレポされ、こともあろうかフィリア王女を押し倒す形になってしまった。



「「はぁ…」」



テレポの確認をしに部屋に入って来たセレナとシェリルがため息をついている。



「ど、どうやら大丈夫そうね」


「そうみたいだね。また明日話そうか」



そう言い残して、クリスさんとノエルさんは部屋から出て行ってしまった。

イースさんは何も無かったように部屋の中を片付け始めた。


おいおい。

この状況をどう潜り抜ければいいというのさ。

難易度高過ぎだろ。





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