第240話 クリスside(セレナ視点)
シーマやシェリルと別れて、私はクリスさん達とグレイスの情報を聞きに冒険者ギルドに行くことになった。
さすがに教会本部までとはいかないまでも、冒険者ギルドも本部なのでそれなりに大きい。
ギルドの中に入ると、まだ朝早いせいか依頼を探しているたくさんの冒険者がギルド内をうろついてる。
「イースさん…」
「セレナさんも...」
私達はさりげなくフィリア王女の前後に位置取った。
これは、私とイースさんで話し合って決めたことなんだけど、変装したフィリア王女の前後を私とイースさんで挟んで、なるべくフィリア王女の存在を見せないようにした。
そして私達はそのまま受付に行く。
「冒険者ギルドへようこそ。本日はどのような用件でしょうか?」
「僕達はこれからグレイスに行こうと思ってるんだけど、知っておいたほうがいい情報ってあるかな?」
「現在グレイスでは教会関係者の出入りが多いくらいで、これといった問題はありません」
「道中も大丈夫かな?」
「そうですね。魔物が大量発生したというような情報もないので大丈夫かと思います」
「わかった。ありがとう」
「また何でもご相談ください」
用は済んだから長居は無用とばかりにクリスさんは急いで席を立つ。
「それじゃみんな、行こうか」
私達はギルドの外に出た。
何とかフィリア王女のことはバレずに済んだようだが、ここはエルブライトだから油断は出来ない。馬車の中でもフィリア王女を挟むようにして座る。
「イース、セレナもありがとう」
フィリア王女が突然言葉をかけてきた。
「今ココでフィリア王女の存在がバレたらどんなことになるのか、こんな私でさえも簡単にわかる。だから、感謝なんてすることないのよ。私もイースさんも当然のことをしただけよ」
「うん...それでも、ありがとう」
「ふふっ、どういたしまして。でも、まだまだこれからが本番なのよ。油断しないでね」
「そうね...そうするわ」
ギルドが終わったら、後はグレイス側、つまりは南側の出入口でシーマとシェリルと合流して、すぐにグレイスへと向かうことになる。
シーマとシェリルは大丈夫かしら。
この待っている時間がとても怖い。
不安が私の胸を締め付ける。
私がその場にいても役には立てないけど、本音を言えば、それでも一緒に居たかった。
もし仮に何かに失敗して殺されてしまうようなことがあったとしても、3人一緒なら後悔することはないから…。
もし、シェリルが私の立場だったらどう思うのだろうか。私と同じように思ってくれるのだろうか。
「セレナちゃん...あの2人なら大丈夫よ。きっと戻って来るわ」
私の不安を察してくれたのか、ノエルさんが優しい言葉をかけてくれた。
「ノエルさん、私...」
「一緒に行っておけば良かったって思ってるでしょ?」
「えっ?!」
「でもね、それをしたらこっちが手薄になるわ。シーマくんはね、ちゃんといろいろと考えてフィリア王女をセレナちゃんに任せたのよ」
「...」
「セレナちゃんはそれをしっかりと実行したわ。ギルドでもフィリア王女の顔が見えにくいようにしてくれてたでしょ? そのお陰で何事もなく私達は出てこれたのよ」
「...」
「あの2人が心配なのは分かるけど、2人がセレナちゃんを信じてくれたように、セレナちゃんもあの2人を信じてあげなきゃ。そう...家族なんだからさ!!」
「!!」
そうだよね...。
私達は家族...。
お互いを信じきれないとダメだよね。
「ノエルさん、ありがとうございました。私達は家族なんだから信じぬくことが大事なんだって気付くことができました」
「ふふっ。いいわよね...家族って」
「クシュン!!」
クリスさんが少し離れたところでくしゃみをした。
私はノエルさんと目を合わせて、お互いに「プッ」と吹き出した。
「!!」
私のサーチに、いきなり2つの反応が現れた。
しかも、真っ直ぐこっちに向かっている。
シーマがテレポを使った?
十分有り得るな...。
ということは、早く街を出たほうがいいということ?
「クリスさん、もうすぐシーマとシェリルがこっちに来ます。すぐに出発の準備を」
「了解した!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます