第238話 接近
『昨日とは全然違うよー。聖女の杖をちゃんと感じるー』
翌朝早くにエルブライトの入口まで来た時にシータに確認したら、ちゃんと認識出来るようだ。
結構賭けの部分があったけど、まずはひと安心だ。
「よし。ここまでは予定通りだね。シーマくん、ここから別行動だ。くれぐれも気をつけて」
「はい。クリスさん達も。セレナ、フィリア王女を頼む」
「わかったわ。シェリル、お願いね」
「任せて」
エルブライトに無事に入れたところで、俺たちは予定通りに二手に分かれた。
ここからはシータが頼みだ。
シータ、ここから聖女の杖のことはどのくらい分かる?
『うーん。それ程遠くないところに感じるよー。でも、動いてるみたいだから、誰かが持ち歩いてるのかなー』
そっちか。
どこかに置いてあったほうがすり替えるのが楽かと思ったんだけど、どうやらエデナさんが持ってるみたいだから、あの作戦を決行する以外にないようだ。
問題はどのような行動をとるのか、だ。
あんまり顔を出したくなかったが、教会に行く必要がありそうだな。
「シェリル、杖はエデナさんが持っているようだから、まずはこれからの行動を掴むために教会本部に行くぞ」
「わかった」
エルブライトは首都だけあって、街はかなり大きくて多くの人々が行き交っている。
そんな中にあっても、最も重要な施設である教会本部はどこにいても分かるくらい大きく、そして分かりやすい。エルブライトのど真ん中にあるのだ。
俺たちも早速そこへ向かうことにした。
「エルブライトの教会本部へようこそ。本日は礼拝ですか?」
教会に着くなり、シスターに声をかけられた。
「えぇ。今日初めてエルブライトに来たので、まずは教会本部に行こうって思ってたんです」
「それはそれは、遠いところをありがとうございます。早速礼拝堂に案内しますね」
礼拝堂に向かう最中にもシスターとの会話を続けていろいろと様子を伺ってみたが、どうやらこのシスターはエデナ派のようだ。
まぁ、それはそれでやりようはあるが。
礼拝堂には当然のようにエルピス像があったのだが、俺が持ってる像のほうがエルピスに似てるな苦笑
『今は大事な時なので邪魔をするような真似はしません。聖女の杖をよろしくお願いします』
祈りを捧げるとエルピスから声だけが届けられた。
今は杖のことに集中してるところだからな。そういう気遣いはありがたい。
「もしかしたら、教会本部に行けばエデナ様をお見かけできるのかな...なんて思ってたんですけど、今日はいらっしゃらないようですね。残念です」
礼拝堂から戻る途中で、俺はシスターに鎌をかけてみた。
「今はこちらにはおりませんが、今日はエルブライト内の教会をお巡りになるそうなので、他の教会に行けば見かけるくらいなら出来るかもしれませんよ?」
「そうなんですか? 他の教会ってどこにあるんですか?」
「教会本部を中心にして、東西南北それぞれ街の入口付近にございますが、どのように巡られるのかまでは…」
「いえいえ、そこまでで十分です。僕たちもお見かけ出来ればいいなって程度なので...。運が良ければお見かけ出来るでしょう」
「ふふっ、そうですね。お2人に神の御加護があらんことを」
俺とシェリルは教会本部を出た。
俺はすぐさまシータに先程の情報を伝えて、聖女の杖の動きを探る。
『今は動きが少ないから、東の教会内にいるみたいだよー。ただ、そこからどこに向かうのかはわからないねー』
いや、それだけでも十分だ。
俺たちも東へ向かいながら、向こうに動きがあれば変更すればいいだけだし。
そこから北か南どちらに向かうか分かったら教えてくれ。
『いぇっさー!!』
俺とシェリルは、街の東側へ行くことにした。
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