第237話 前夜
シェスターの頑張りもあって、エルブライトの街が見えるようになったところまで来ることが出来た。
もうその時には陽も落ちかけていたので、無理はせずに野営をして、明日に備えて早めに休むことにした。
その前に明日の作戦会議だ。
リビングで簡単な食事をしながら、明日のことについて話し合う。
...のだが、その前にシータに聖女の杖の反応があるか確認する。
『まだうっすらとだけど感じるようになったよー。街に入る頃にはバッチリ確認出来るよ、きっと』
よし。
それなら何とかなりそうだな。
「フィリア王女、クリスさん、明日は朝からエルブライトに入り、聖女の杖を奪ったらすぐにそのままグレイスに向かいましょう」
俺はクローツにいた時から考えていた事を、立場的に1番上のフィリア王女と実力的に1番上のクリスさんに向けて提案した。
「ずいぶん強行な日程だけど大丈夫なの? エルブライトで食料を買い足さなくてもいいの?」
「さすがに首都だからね。もうちょっと慎重に行動してもいいと思うけど」
まぁ、そうだよな。
事が事なだけに慎重に行きたいという理由もよくわかる。
「まず、食料についてはこうなることを想定してクローツで買い足してますので問題ないです。そして、肝心の聖女の杖についても奪う算段は考えてます」
「どうするつもりなの? あんまり無茶はしないで欲しいんだけど」
俺はアイテムボックスから、レプリカの聖女の杖を取り出してから答える。
「これはクローツの武器屋で手に入れた聖女の杖の模造品です。これと本物をすり替えるつもりです」
「どうやって本物を探し出すんだい?」
俺はもう片方の手にシータを取り出してからさらに答える。
「聖女の杖は『神の声』です。同じく神の声であるシータが、聖女の杖の在り処を教えてくれることになってます。さっき確認してもらいましたが、既にエルブライトの中に反応を感じているようです」
「そこまではわかったわ。完璧と言えるほどの準備ね。問題はエデアさんが持っている場合よ」
「はい。その時は俺とシェリルが隠密スキルで近づいてから、通行人を装ってエデアさんの持つ杖目掛けてぶつかり、俺は拾うフリをしてすり替えるつもりです」
「...クリスさんはこの作戦どう思う?」
「よく考えてますね。試す価値は十分にあるかと。仮に失敗してもシータがいれば何とかなりそうですし、いいんじゃないですか?」
「...シェリル、危険な役目を背負わせちゃうけど大丈夫?」
「ボクなら大丈夫。シーマのためなら何でもやるよ。嫁だしね笑」
「それが嫁としての覚悟なのね...。セレナもそうだけど、シェリルも心が強いのね...」
「もちろん、友達であるフィリア王女のためでもあるよ」
「...シェリル、ありがとう。それでは明日はお願いね」
「うん。ボクに任せて!!」
どうやら俺の作戦にフィリア王女たちは納得したようだな。
良かった良かった。
「それでシーマくん。僕たちはどうすればいいかな?」
「みんなで街に入ったら、俺とシェリルはすぐに聖女の杖を探しに別行動をします。他のみんなは冒険者ギルドでグレイスの情報を聞き出して下さい。その後でグレイス側の出口近くで待ち合わせましょう」
「わかった」
「あと、エルブライトにはフィリア王女を知ってる人が結構いるかもしれません。今バレると大変な騒ぎになるので、それだけは充分注意して下さい」
「そうだね。イースさんにも協力してもらって、さらに変装を加えることにするよ」
「よろしくお願いします」
「みんな、明日は忙しない1日になるわ。無事に聖女の杖を奪ってエルブライトを通り抜けるわよ!!」
「「「「「「おー!!」」」」」」
フィリア王女が最後、話を締めてくれたおかげでみんなが改めてひとつになれた気がする。
もしもこの作戦が無事に成功したら、
またその喜びをみんなで分かち合いたいな。
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