第235話 焦り
「...というわけで、恐らく聖女の杖はエルブライトのエデナさんのところ。そして聖女クラリスはグレイスの教会に監禁されているようです」
俺はエルブライトへと向かう馬車で、エルピスから得たばかりの情報をみんなに伝えた。
本音を言えば、もう少しクローツに泊まって街中をゆっくり見たかったけど、状況が許してくれるわけもないので帰り道の楽しみに取っておくことにした。
帰りはゆっくりしたいな...。
「それじゃあ、まずは聖女の杖からだね」
「よーし。頑張って行こう!!」
フィリア王女の言葉にシェリルが気合いを入れて答える。
目的がより具体的になったことで、みんなもさらにやる気が出てきたようだ。
順調に行けば2~3日でエルブライトには着くはずだ。
その間にどんどん魔物を狩って、いざという時のためにレベルアップしておきたい。
...と思ったものの、
今日はあまり魔物に出くわさなかった。
少ない獲物をシェリルと奪い合うという、何とも不思議な感じになってしまった。
「シーマくん、レベルアップしたいのもわかるけど焦らないほうがいいよ」
今日の宿泊地を決めて準備している時、声をかけてくれた何気ないクリスさんの言葉にハッとする。
そうか、俺は焦っていたのか...。
「そうですね。すみません、ちょっと焦っていたようです」
「気付いてないかもしれないけど、シーマくんは充分強い。スキルもたくさんもってるし、今はシータもいる。Sランクのレイジにも負けなかったんだ。もっと自信持っていいと思うよ」
「...」
「戦いを楽しめとは言わないけど、気負い過ぎても良い結果は出ないからね。僕もいるし、他のみんなもいるんだからさ。1人で何とかしようとしないで、一緒に戦っていこうよ」
「ありがとうございます。もうちょっと肩の力を抜いてみることにします。また何か気付いたことがあったら何でも言って下さい」
「そうだね、そうする」
クリスさんはそう言って家に入っていった。
やっぱり経験の差なのかなー。
自分に自信が持てないから、どんどん自分を追い込んで空回りしてしまう。
俺がやらなきゃって思ってたけど、そうじゃないんだな。俺たちで成し遂げればいいんだ。
何となくだけど、シータと喋りたくなったので、シータ取り出して魔力を込める。
シータごめんな。
俺はちょっと焦ってたみたいだ。
『あたしがいるんだもん、何があっても問題ないよ!!』
ハハッ...そうだな。
『大丈夫、あたしが守ってあげるよー!!』
普通は俺が守ってあげる側だよな笑
でも、神の声がそう言ってるからなのか、不思議と安心する。
お礼のつもりで魔力をもっと注いでみた。
『あ〜ヤバい。 あたしの奥までズンズン来るー。気持ちいいー!!』
うん。
聞こえようによっては、そっちがヤバい。
『まだダメ、まだダメ。(魔力を)抜いちゃダメー!!』
いちいち卑猥に言わなくてもいいのに...。
すると、
俺が刀を握ったままずっと立っていたのを不思議に思ったのか、馬のシェスターが近づいてきた。
「ブルルー...」
シェスターが俺の胸の辺りに自分の顔を擦り付けてくる。
「!!」
俺は少しビックリしながらもその頭を撫でると、優しい目をさらに細くして気持ち良さそうにしている。
そういえばニンジンはあげてたけど、あまりスキンシップはしてなかったなー。
ここまで順調に来れているのはシェスターのおかげでもあるんだ。もっと構ってやらないとな。
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