第230話 シスターの想い



目を開けるとクローツの教会へ戻っていた。

まだ近くにシスターがいたので聞いてみる。



「シスターは、聖女クラリス様をご存知ですか?」


「ええ、もちろん。素晴らしいお方ですよ」


「実際お会いしたことがあるんですか?」


「ええ、何度か。聖女の杖から放たれたあの奇跡の光。一生忘れないと思います」



うん。

確かにエルピスというよりは、クラリス信者のようだな。

もう少し突っ込んでみるか。



「その聖女クラリス様はどちらにいるのか知ってますか?」


「!!……」


「正直に言います。俺たちはオルティア王国から、聖女クラリス様を救出するために来ました。どんなことでも構いませんので、シスターの持ってる情報をいただくことは出来ないでしょうか」


「何故他国の方がそんな事を...」


「これは内密にして欲しいんですが、オルティア王国の第3王女であるフィリア様が聖女クラリス様と仲良くされてまして、聖女の危機を察知したフィリア王女様が俺たちに救出を依頼してきたのです」


「...」



ちょっと言い過ぎたかな?

チラッとフィリア王女のほうを見ると頷いてくれたので、この流れのまま行くことにしよう。



「これがその依頼があった封書です」



俺はダミーのアイテムバッグから王家の紋章入りの封書をシスターに見せた。

実は中身が全然違うもので、フィリア王女を助けた時の褒賞のないようが書いてあるだけの書簡だが、中身を見せなければバレないだろう。



「確かにこれはオルティア王国王家の紋章...。わかりました。私の知ることをお話しますので、どうか聖女クラリス様をお助け下さい!!」



よっしゃ!!

上手くいった。

これで詳しい情報を手に入れられるぞ。



「今教会はクラリス様派とエデナ様派に分裂しております」


「「分裂?!」」



おーっと、フィリア王女はあんまり出てこないでね。バレるとヤバいから。


「エデナ様はネグロ枢機卿の娘でエンデ教皇の孫にあたり、魔法の素養があったことから聖女クラリス様と同じくらいの力を身につけました。すると、クラリス様の凄まじいまでの人気を妬んだ人達が一斉にエデナ様を担ぎ上げて、次代聖女しようと目論んだのです」


「でも、聖女は確か女神エピルス様のお告げがないと...」


「その通りです。ですが、エデナ様を支持する方々はそれらを無視して、遂には無理矢理にクラリス様から聖女の杖を強奪してしまったのです」


「「何てことを...」」


「聖女としての力を失ってしまったクラリス様は塞ぎ込んでしまった上に、エデナ様派によってどこかに監禁されているようです」


「どこに監禁されているんですか?」


「すみません。残念ながら、私が知っているのはここまでで、どこに監禁されているのかはわからないのです。エルブライト、もしくはグレイスかと思いますが...」


「グレイスですか?」


「ええ。グレイスはエデナ様派がとても多い街で、クラリス様派は敬遠しがちなので監禁する場所としては可能性が高いかと」


「そこまでの情報を掴んでおきながら、クラリス派は誰も助けにいかないのですか?」


「私だって今すぐにでも助けに行きたいですよ!!!!!!」


「「!!」」





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