第229話 クローツ



クローツは一言で言えば『きれいな街』だ。

区画整理とまではいかないが、ある程度揃ってまとめられている。治めている人がキチッとした人なのかもしれない。


俺たちはまず、お決まりの冒険者ギルドに行く。

ギルドに中に入ると、俺とクリスさんは目を合わせて後ろに下がる。男が後ろから見守るというちょっと奇妙な光景ではあるが仕方ない。リーズでのようなことになると面倒だからね苦笑



「やはり教会内のゴタゴタは確認してるみたいだけど、聖女クラリスの詳しい情報はないわね」


「やはり教会にも行ってみるしかないよ」



受付嬢とはノエルさんとシェリルが対応していたが、あまり情報は得られなかったので、おすすめの宿だけ聞いて、すぐさまこの街の教会へ向かった。



「お祈りですか?」


「この国は初めてなんですがよろしいでしょうか」


「ええ、もちろん。女神エルピス様もお喜びになられることでしょう。ご自由にお祈り下さい」



教会に入るとシスターに声をかけられたので、この国の作法がわからなかったこともあり、初めてを強調しておいたが特に問題ないようだ。

俺たちはやや似ていないエルピス像の前で祈りを捧げる。

すると、当然のように俺はエルピスのところへ呼ばれた。



「シーマくん、いらっしゃい。また私に会いたくなったのかしら? この前会ったばかりなのに...もう♥」


いや、聖女クラリスの情報を得るために教会へ寄っただけなんですけど...。

教会に来たからにはお祈りしないわけにはいかないよね?


「ふふっ、本音どうなんでしょうかね?」


まぁ、会いたくないって言ったら嘘になるけど...。


「そうでしょう、そうでしょう。何でも聞いて下さい。あなたのエルピスが答えちゃいます」


何か言ってるけど聞き流そう...。


そんなことはともかく、聖女クラリスの居場所はわかった?


「そんなことって...泣」


わかった、わかったよ...。

俺のエルピスよ、クラリスの居場所はわかったかい?


『ねぇー、この茶番はいつまで続くの?』


「シータはおこちゃまだからわからなくていいのよ!!」


で、実際のところはどうなの?


「まだ分かりません。シータのほうはどうですか?」


『まだ、それっぽいのは感じなーい』


そうか...。

まぁ、それはそれでしょうがない。

引き続き頼むよ。

それと、クローツの教会のシスターはクラリス派なのかってわかる?


「はい。あの子は断然クラリス派ですね。女神の私よりもクラリスなくらいです」


それはそれでどうなの?

まぁ、いいけど。

ちょっと聞いてみようかな。


それじゃエルピス、また。


「えっ? もう行っちゃうのですか?」


うん。

また来るよ。


「...。わかりました。それではまた」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る