第223話 レイジ



「ウオオオォォォ!!!」



レッドボアを蹴散らすようにして、群れの真ん中を何かが通り抜けてくる。


ん?

あれは人間だよな?


『そうだね、人間だね。でも様子がおかしいんだよねー』


そう言われてみると確かにおかしい。

なりふり構わず斬っている感じだ。

馬車のほうには近づけたくないな。


『嫌な予感がする。シーマ、魔力を最大にしてちょうだい』



俺はシータを信じて、ギリギリのところまで魔力を注ぎ込む。



『おぉー!! いい感じいい感じー。これなら何とかなるかな…』


いやいや何とかしてくれよ。

ここで死ぬ訳にはいかないんだ。



「邪魔だぁぁぁ!!!」



ガキーンッ!!



「何だとぉぉぉ!!!」



迫り来る狂気の剣を、シータが受け止めた。

スゲー。



キン!

キンッ!!



「シーマくん、早く離れろ!! そいつは『狂剣のレイジ』だ!!」



クリスさんの声が聞こえたのいいが、残念ながらそれどころじゃない。受け止めるだけで精一杯で離れられる気がしない。



「お前面白いなぁ!! 魔剣…いや、違うな。もしかして『神の声』なのか?!」



何だそれ?

神の声って何だよ。

何言ってんだこいつ。



キン!

キンッ!



「クッ!!」



マズイな。

かなり押されてる…。



キンキンッ!

キーーン!



こうなったら、俺がどこまで耐えられるかだな。ひたすら我慢比べになるのか。

みんなは大丈夫なのかな?

レイジから目を離せないから状況が分からない。

まぁ、エリシオンがいるから問題ないだろ?



「チィッ!! 気が付いたらもう魔物がいねぇじゃねぇか!! 」



んっ?!


レイジとやらの狂気じみた剣が急に鎮まった。

どうやらみんなが魔物をすべて倒してくれたようだ。



「俺は斬るのが楽しみなのにお前と遊んでたら、お前の仲間に魔物を全部倒されちまった。もうつまんねぇから帰るわー」


「…」



レイジは俺に背を向けて歩き出したが、何故かすぐに振り向いた。



「おい! お前の名前は?」


「シーマだ」


「シーマか…どこかで聞いたか? いや、分かんねーな」


「…」



いったいどっちなんだよ。

まぁ俺としては関わりたくないから、分かんないほうがありがたいけど。



「どっかでまた会ったら、続きをしようぜ!!」



レイジはそう言った後、背を向けて立ち去っていった。

今度は振り向かなそうだ苦笑



続きか…。


嫌だよ。


絶対やりたくねー!!




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