第222話 国境の群れ



オルティア王国とエピリシア教国の国境は川だ。

南北に流れる川が海まで流れており、その東西で国が分かれている。


国境を渡るには橋を渡って川を越えるしかないのだが、川辺は水があるとの理由で魔物が多く生息している。

リーズのギルドによれば、俺たちが通る橋の近くにも多くの魔物がいるそうだ。



「もう遅いから、今日はここまでにしようか。どうですか、フィリア王女様?」


「そうね。クリスさんの言う通り、今日はもう休んだほうがいいわ。もう国境近くまで来てるんだし」



俺たちもようやく国境付近に到着したのだが、既に夕方になっていたために無理はせず、一晩休んでから国境越えに挑むことにした。

俺はと言えば、相変わらずシータに振り回されているが、徐々にその感覚をつかみ始めてきて、俺の意思でシータを振るようになるのも時間の問題かと思えるようになった。


ただ、以前と違っているのは疲労だ。

戦闘中は自分で動かしていないことが多い分終わった時はかなり疲弊している。セレナのヒールでこまめに回復させてもらってはいるけど、いろんな意味での心の疲労はなかなか癒えない。

今日も料理を作る気力はないなー。



どっかで風呂に浸かりたいな…。


そうだ、

今度時間があったら風呂でも作ろう。




翌朝。

俺たちは早々に国境を目指して出発した。


国境を越えて来たのか、魔物に敗れて帰ってきたのか、よく分からない傷ついた冒険者達とすれ違うことが多くなってきた。

助けてあげたい気もするけど、こっちもいろいろと余裕があるわけじゃないし、ただでさえ美女が多いから狙われやすいんだ。余計な触れ合いは極力避けないといけない。頑張って街まで辿り着けるように祈るだけだ。


そして、

そんなこんなしてるうちに、もうすぐ国境ってところで、俺たちがレッドボアの群れに襲われた。

否応にもフィリア王女を救出したあの時を思い出してしまう。しかも、ご丁寧にあの時よりもレッドボアの数が多い。

シータもサーチも事前に感知していたのだが、こんなにいるとは思ってなかったので、少々慌てた対応になってしまった。



「馬車を守るようにして応戦するぞ!!」


「「「はい」」」


「わかった」



クリスさんの指示に対して、俺たちは素直に従い馬車の周りへと散らばる。



『シーマ、馬車は彼らに任せて飛び込むよ!!』


えっ?

いきなり指示を無視すんのかよ。


『大丈夫だよ。刀を振りながら進んでいくだけだから』


まったくもう…。



「シェリル、セレナのカバーを頼む。シータが飛び込みだがっててさ…」


「任せて。シータ、あまりシーマに無理させないでよ?」


『これも修行だよ、修行。ぐふふ』



シェリルには聞こえてないだろうけど、シータは俺に無理させる気マンマンだ。



『さぁ行こう、シーマ!!』


へいへい。

お供しやすぜ。



俺はシータと共に、レッドボアの群れに飛び込んでいく。


相変わらずシータに振り回されながらも、なるべく体は馬車から離れないように立ち回り、足場の邪魔にならないようにすぐさまアイテムボックスに収納していく。


そして、

レッドボアがある程度片付いた時、

シータがまた意思を伝えてきた。



『んー? 何かヤバそうなのが来てるよー』


何だそりゃ?

このクソ忙しい時に…。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る