第221話 説明する



シータとの初陣が終わって馬車に戻るとみんなが唖然としていた。



「シーマくん、その剣はいったい…」



クリスさんが先陣を切って聞いてきた。



「この剣がボロボロだったのは魔力が足りてなかったからなんです」


「えっ? それじゃあ、魔剣ってことなの?」



今度はノエルさんが聞いてくる。



「そうですね。魔剣の部類だとは思います」


「部類ってことは何かが違うの?」



次はセレナか。



「普通の剣は両刃だろ?これは片刃で、しかも刀身がほんの少しだけ反っているんだ」


「よくそれが魔剣だってわかったね。ボクでも分からなかったのに」



その次はシェリルと。



「ほら、武器屋に行く時に声がしたろ? 俺はその剣に呼ばれてたんだよ」


「女の子の声がするって言ってた時ですね」



おっ、次はまさかのイースさん。



「そうです。俺は意思をもったこの魔剣に言われた通りに魔力を注ぎ、そしてそれに動かされるようにして戦いました」


「それっ…」


「だからあんな動きだったのか…。今まで見たことのない速さだったよ。何だか光り輝く剣と一体化してるようだった」



最後はフィリア王女かなって本人もそう思って口を出しかけたら、まさかのクリスさん再登板だった苦笑



「確かにそうですね。魔剣と繋がってる感覚がとても不思議でしたが、上手く戦えたのかなとは思ってます。それは魔剣も同じだったようで、名付けを要求してくるほど仲良くなりましたし」


「「「「「「…」」」」」」


「それで、シータって名前を付けました。シータもとても喜んでましたよ…って、あれ?」



気が付いたらみんな無言で呆れ返っている。

相手は刀なんだから、やらかしたって問題なくない?



「シーマさんが初めて名前をつけるのは、私たちの子供になると思ってたのに!!」


「…?」



いやいや、満を持して最後の最後でフィリア王女が出てきたと思ったら、何だかとんでもないことを言ってるぞ。

妄想が先走って、結婚どころか出産までしちゃってるじゃん!!笑



「その魔剣、どうにかして闇に葬れないかしら…」



ご機嫌斜めなフィリア王女は、おそらく刀の抹殺でも考えてるのだろう。

こちらとしてもせっかく出会えた刀だ。どうにかして阻止しないと。



『そしたらさ、 あたしがその子が何歳までおねしょをしてたのか刀身を光らせて教えてあげる…ぐふふ』



俺はシータの言葉をそのままフィリア王女に伝えたところ、どうやら彼女にも火が付いてしまったようだ。



「いいわ、やってご覧なさい。どうせテキトーなんでしょ?」



『恥かくことになっても知らないわよ…ぐふふ』



シータは言葉通り、刀身を光らせていった。


1.2.3.4.5…



「ね、ねぇ、ちょっと…」



6回目を超えたくらいから、フィリア王女が急にそわそわし出した。


7.8…



「シータちゃん、ストップ!!」



8回目が付いたら、急にフィリア王女がシータを止めた。

そして、シータを奪い取ってそのまま誰にも見えないようにしてしまった。



「ねぇ、シータちゃん。誰にも分からないように教えてくれないかしら?」



そう言うと、フィリア王女はしばらく黙ってしまった。

そして、しばらくすると真っ赤な顔をして俺にシータを渡してきた。



「私の負けよ。シータちゃんの好きになさい」



素直に負けを認めたフィリア王女。

かっこいいのか、かっこ悪いのか

俺には分からずにいた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る