第218話 呼ぶ声



買い出しが終わった後は、セレナの矢を補充するために武器屋へ寄ることになった。

これにはセレナの他に、ノエルさんも弓をやるようになったことが関係しているのだが、実際のところは2人とも命中率が高いので、失くした矢の補充というよりは劣化や破損による補充になる。




『いい感じの魔力の匂いがする~』



俺たちが向かっている武器屋のほうから声が聞こえてきた。



「魔力の匂い?」



俺は何のことか分からずに、ただ思ったことを口にしていた。



「シーマ、魔力の匂いって何?」


「えっ? さっき女の子の声がしただろ?」


「また女の子……はぁ」



怪訝な感じでシェリルが聞いてきたので俺も普通に答えたが、セレナは何故かため息を付いている。



「シーマさん、私にも聞こえなかったけど本当に聞こえたの?」



この会話が気になったのか、フィリア王女までもが俺に聞いてきた。



「あの武器屋のほうから確かに聞こえてきたんですけどね…って、んんっ?」


「どうしたのシーマ?」



俺が変な反応をしてしまったために、セレナが気にしてしまったようだ。

だが、それも無理はない。

俺の見方が正しければ、ちょっとありえないことが起きている。



「いや、武器屋の隅っこにある剣?が俺の目に光を当てて来るんだよ…」


「はぁ? シーマ、何を言ってるの?」



シェリルはそう言うが無理もない。

剣が動くわけないもんな…。



「どっちみちあの武器屋に行くんだから見てみればいいんじゃない? 何だか面白そう!!」


「ノエル…」



思わぬところでノエルさんのスイッチが入ってしまったようだ。

それをみたクリスさんはやれやれ感を出している。


まぁでも、ノエルさんの言う通りかもな。

実際に見て初めて分かることがあるかもしれないんだ。




そして、俺たちはその武器屋に入った。




「矢を多めに欲しいんですけど、ここにあるものだけですか?」



俺は店内にあった矢を指して、店主らしきおじさんに声をかけた。



「裏にまだあるからちょっと待ってな!!」



そう言っておじさんは店の奥へ行ってしまった。




『ねぇ、もうちょっと近づいて来て』



「?」



また、あの声がした。

俺はびっくりしてしまった自分の声を押し殺して周りを見たが、誰も反応してなかった。

どうやらその声は俺にしか聞こえないようだ。






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