第212話 イースさんの料理?



初野営の翌朝。

俺が朝食の準備をしてると、イースさんが声をかけてきた。



「王女付きの侍女である私にも何か手伝わせて下さい」



そっかー。

立場上、じっとしてはいられないか。

でもなー、一緒に料理でもしようものなら、アイラの時と同じ轍を踏むことになりそうだしな...。



「今は休業してますけど、俺って元々宿屋をやってたんですよ」


「はい。フィリア王女様より聞いております」


「だから、俺が食事を作って提供するのって当たり前のことなんですよねー。だから、ちょっと今は思い付かないけど、何かあったらイースさんにも手伝ってもらいますので、それ以外はフィリア王女の世話をしてあげて下さい」


「そんな...」


「シーマさん、私のことは大丈夫よ。自分のことくらいは自分で出来ます。それこそ、いつでも嫁入り出来るくらいです」


「...」



俺がイースさんのご厚意をさらっとかわそう思ってた矢先を、フィリア王女にポッキリと折られてしまった。

何してくれてんねん。

しかも、何でこんな時に限って早起きなんかなー苦笑

いや、違うな。

イースさんが起こしたんだ、きっと笑


ちなみに、この家の部屋割りは俺たちディオランサで1部屋、エリシオンで1部屋、フィリア王女とイースさんで1部屋となっている。


何か手伝ってもらうようなことか。

何かあるかな...。

とりあえず、今日のところは肉でもカットしておいてもらおうかな。



「それじゃお言葉に甘えて、お肉のカットをお願いしてもいいですか? ひと口大くらいであれば大丈夫です」


「わかりました。是非やらせて下さい」


さすがに王家に仕える侍女だな。

サクサクとこなしてしまう苦笑



「他にも切るものはありますか?」


「いや、今日のところはその辺で大丈夫ですよ。助かりました」


「それなら、シーマさんが料理するところを見ててもいいですか?」


「別に構いませんけど、あまり面白いものじゃないですよ? 少しばかり特殊かもしれないですけどね」


「そんなことないです。少しでも覚えて自分でシーマさんの料理を作れるようになりたいです」


「普段は自分で料理するんですか? いつもは料理長の料理をいただくので、お休みの日にちょっとだけ...」


「いろいろあるんでしょうけど、普段からやってみればいいのに。イースさんの料理だったらフィリア王女も喜ぶんじゃないんですか?」


「あぁ、それは...」



ずっと聞いてるだけだったフィリア王女が何か言いかけたが、それを遮るようにしてイースさんが答える。



「ふふっ、わかってないですね、シーマさんは笑」


「?」


「フィリア王女様は、シーマさんの料理を私が作ってもダメなんですよ」


「?」


「シーマさんが作る料理が食べたいんですよ」


「ちょっと、イース!!」


「何ですか、フィリア王女様? 私が間違っていますか?」


「間違って......はいないんだけど、その...」



フィリア王女がイースにやり込められてるのを見るのも面白いな笑

きっと2人はいい関係なんだろうなっていうのがよく分かる。微笑ましい光景だ。


話の内容は別としてだけどね...。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る