第209話 しばしの別れ
フィリア王女を連れて王城を後にした俺たちはヒーラへ戻ると、早速エリシオンを呼び出した。
「クリスさんとノエルさんにお願いがあります」
「急に改まってどうしたんだい?」
「俺たちディオランサとフィリア王女と共に、エピリシア教国へ行って聖女救出に協力してもらえませんか?」
「...わかった。いいよな、ノエル?」
「そうね。特に予定もないし、いいんじゃない? むしろ楽しそう」
「えっ、あ、ありがとうございます。その...理由とかは聞かないんですか?」
すぐさま了承されるとは思ってなかっただけに驚いてしまった。そして、気になったのは引き受けた理由だ。
「だって、シーマくんからのお願いだし、フィリア王女様もいるんだから、依頼についての間違いはないだろ。それに、ちょっと刺激的なほうがノエルも楽しんでくれるからね。断る理由なんてないんだよ」
「依頼中はシーマくんの料理がずっと保証される。それだけでも十分」
「「「…」」」
「でも、ちょっと気になるのは、イルマさんが1人になっちゃうことかな」
「「「「あっ!!」」」」
イルマさんのこと忘れてた。。
どうしよう...。
まぁいいか、ここまで決めちゃったんだ。今さら後には引けない。
「...という訳で、俺たちみんなで出掛けることになったんです。しばらく空けてしまいますが、また戻ってきますのでその時はまた泊めて下さい」
「そうかい...いよいよ行くんだね。でもまた戻ってくるんだろ? その時が早く来ることを祈ってるよ。みんながちゃんと無事で帰ってくるんだよ...」
みんなでイルマさんに伝えに行った。
イルマさんも心のどこかでは覚悟を決めてたみたいで、必要以上の言葉や態度はなかった。
そして、翌日の朝。
いよいよ出発の時だ。
いつも通りに食事をして、出発の用意をしていたところ、イルマさんに声をかけられた。
「ほれ。これを持っていきな」
イルマさんの手にはたくさんのポーションがあった。
イルマさんのお手製ポーションは、毎日売り切れるほど冒険者には人気がある。それなのに、今その手元にたくさんあるということは、俺たちのためにわざわざ作ってくれたってことだ。
「イルマさんのポーションがこんなに...。ありがとうございます」
気が付くとセレナが答えていた。
そうか...。
セレナはポーションをこれだけ作るのがどれだけ大変か知っているんだ。
「あんたたち、フィリアを頼んだよ」
「わかりました。任せて下さい。それと、イルマさんにお願いがあるのですが…」
「何だい?」
「バタバタしてて、アイゼン幻陽に出発のことを伝えそびれました。イルマさんから事情を説明しておいてもらってもいいですか?」
「別に構わないけど高くつくよ?笑」
「帰ってきたら、また料理をご馳走様しますよ笑」
「それで決まりだ。約束したからね笑」
俺たちはヒーラを出発した。
冷蔵の魔道具にたくさんの料理を残して...笑
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