第208話 また謁見



翌日。

貴族会議の日だ。

非公式の会談のために、俺たちは王城へと向かった。


王城では、フィリア王女と会談をしてるところに、ゼスト国王が来て話をするという算段だ。

どんな形であれ、ゼスト国王と会うことになるんだ。俺的には謁見となんら変わりない。


フィリア王女とは昨日、どこまで話すのかは打ち合わせているから多少は楽かな。それに沿って忠実に実行していけばいいだもんな。



そして、遂にその時が来た。



「ディオランサの諸君久しぶりだな。いつもフィリアがすまないね。今日はどんな要件かな?」



ゼスト国王は俺たちの客室に入って来てテーブルに着くなり本題に入ってきた。今日は貴族会議の日だもんな。相当忙しいのだろう。



「ゼスト国王様、本日は忙しいところお時間をいただきありがとうございます。早速ですが、私たちディオランサよりお願いがあって参りました」


「うむ。続けてくれ」


「これから話す内容は秘匿事項がございますので、人払いをしていただきたいのですが...」


「分かった。俺とフィリア、ディオランサ以外は出ていってくれ」



よし。ゼスト国王が簡単に人払いをしてくれた。第1段階クリアだな。

俺は遮音の魔道具を起動してゼスト国王に話しかける。



「ゼスト国王様、これから私たちディオランサは隣国のエピリシア教国へ、聖女クラリス様を救出に行くのですが、フィリア王女様にも内密にご同行をお願いしたく参った次第です」


「どういうつもりだ?」


「これは女神エルピス様からの依頼なのです」



ガタンッ



「何と!! それは誠なのか?」



女神エルピスの名が出た途端、大きな声を出して立ち上がり、そしてまた座った。



「私シーマは以前に死にかけた時にエルピス様に救われまして、それ以降は祈りを通して意思疎通を図れるようになりました。

私がアイテムボックスを持っているのも、先日フィリア王女様を救えたのも全ては女神エルピス様からの指示があったからです。それで信じてもらえるでしょうか」


「...フィリアはどう思うのだ?」


「聖女クラリス様に危険が迫っているのは、この前お会いした時に本人から直接聞いていましたが、それはお父様を含め誰にも話していないことなのです。それを知ってるのはやはりエルピス様なのかと」


「...フッ、面白い男だなシーマは」


「お父様...」


「分かった。フィリアの同行は許可しよう。ただし、イースも連れて行くこと。それが条件だ」


「寛大なご配慮、ありがとうございます」


「しかし、仮に聖女クラリスを救出したとして、その後はどうするのだ? オルティアへ連れてくるのか?」



さすがは国王だな。

その後のことまで考えてる。

そして、それはフィリア王女も同じようだ。



「それはクラリス様のお心次第かと。次代の聖女が決まっているのであれば、オルティアへ避難させようかと思っておりますが構いませんか、お父様?」


「...そこはフィリアの判断に任せるが、今回お前はエピリシア教国からの縁談を断ることになるのだ。くれぐれも慎重にな。それと、これを使え」


「?」



そう言って、ゼスト国王は2枚の冒険者カードをフィリア王女に手渡した。



「それはフィリアとイースの冒険者カードだ。もちろん偽名だがな。この前のことがあった上に、しばらくは周りが騒がしくなるからな。念の為作っておいたのだ」


「ありがとうございます、お父様」


「シーマ、フィリアを頼んだぞ。聖女の件が終わったらまた来てくれ。今度はゆっくり話そう」


「承知致しました」



ゼスト国王は立ち上がって俺と握手を交わすと、満足そうに部屋を出て行った。



「ふぅー」



どっと疲れてテーブルに突っ伏している俺を横目に、フィリア王女はイースさんを口説いて、了承を取り付けていた。



あとはエリシオンか...。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る