第205話 打ち明ける
「フィリア王女、すみません。もう夜なのに急に呼び出したりして」
「シーマさんがすぐに会いたいって言うから何も言わずに城を飛び出してきちゃった。えへっ♪」
「「あーぁ...」」
嫁ズが呆れているが、今はそれどころじゃない。
俺は部屋に遮音の魔道具をセットしてから話しかけた。
「3人に大事な話があるんだ」
「「わかった」」
「えっ、私も? 遂に嫁入り?」
「「...」」
「いや、残念ながら違いますけど、もっと重要なことかもしれないです。この3人にしか言えないことなんです」
「「「...コクコク」」」
3人は事の重要さがようやくわかったのか、静かに頷いてくれた。
「出来るだけ早く王都を出発して、エピリシア教国の聖女を救出しなければならなくなったんだ。それにこの3人を連れて行きたい」
「「わかった」」
「えっ? もう了承したの? 早くない?」
「だって...」
「ボクたちはシーマの嫁だからね。どこまでも付いていくよ」
さすがは嫁ズだ。
覚悟が違う。
そんなとこも可愛いなー。
今日も激しい夜にしちゃうぞー
って違う違う...違わないか?
「なぜシーマさんがクラリスに危険が迫っているのを知っているの? それを知ってるのはこの国ではクラリスに直接会って話した私だけのはずよ」
「女神エルピスから聞いたんだ」
「「「!!」」」
さすがにビックリだよな…。
でも、ここで話を止めるわけにはいかない。
「俺は以前死にかけた時にエルピスに救われたんだ。そしてその時に異世界人の記憶も入ってきた...エルピスの意向でね。俺の料理が多少変わっているのはそのためなんだ」
「「そんな...」」
「それから俺はエルピスの使いのようになり、祈りを通して意思の疎通を図り、スキルを貰ったりしながら生活や冒険をしていた。そんな中、1回だけエルピスのお願いを聞いて行動したことがある」
「「「えっ」」」
「フィリア王女を助けた時だ」
「「「!!」」」
「あの時、俺の頭の中にエルピスから『この国の王女が襲われている。私の熱烈な信者だから助けてあげて欲しい』と言われたんだ」
「...グスングスン」
フィリア王女はもう泣きながら俺の話を聞いている。
どういう気持ちなのかはわからないが、俺はそのまま話を続けることにした。
「フィリア王女、今まで黙っててすみませんでした。俺たちが助けに行ったのは偶然ではないんです。エルピスに言われて行動したからなんです」
「あの時...」
「急にシーマが少女を助けに行くって言い出したんだよね..。まさかそんなことがあったとは...」
「…グス」
「今回もあの時と同じなんです。先程エルピスから『教国の聖女を救出して欲しい』って言われたんです」
本当は誰にも言ってはいけないことなのかもしれないけど、俺は1人で生きているわけじゃない。俺たちはもう家族なんだ(若干違う人もいるけど)。みんなと共有することで心の負担も軽くなるんだよな。
「...私はエルピス様にも助けられていたのね。
今までエルピス様を信じてきて本当に良かったって心から思える。そしてそれはこれからも変わらないわ」
フィリア王女が俯いていた顔を上げ、まっすぐな視線を俺に向けてきた。
「そうですね。そのままでいいと思います。このまま信仰を続けていけば、いつか夢の中ででもエルピスに出会えるかもしれませんし...」
「えっ、ちょ、ちょっと待って!! さすがにそこまでは望んでないわ。でも、そんな時が来たらちゃんとお礼を言いたい。シーマさん、セレナやシェリルと引き合わせてくれてありがとうって...」
「「フィリア...」」
やっぱりこの3人はいい関係だよな。
人生を変える出会いがあるっていうけど、この3人にとってはこの時だったのかもしれない。
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