第202話 革命



「それでは今日のメイン料理ですね。こちらをどうぞ」



俺はみんなの前にそれぞれシチュー皿を置いた。



「茶色いってことはシチューではないのよね?」



早速エテルナさんが聞いてきた。

この世界ではあまりない色だからな...。警戒するのもわかる。



「まぁ食べてみて下さい」



俺の言葉に、みんなが恐る恐る中身をすくって口へと運ぶ。



カシャン

カシャン...



スプーンが皿に落ちて、その音だけが部屋に響き渡っている。



「シーマ。お前さ、料理に魔法でも掛けてんじゃねえのか? 笑」


「そうだねー。これは本当にそう思っちゃうよー笑」


「ガッデム!!」



オルテガさんの「ガッデム」はこの場合どういう意味なの?笑



「シーマさん、はっきり言うわ。こんな深みのある美味しい料理は王城でも出ない。野菜も肉も柔らかくて口の中で溶けちゃってるみたいだわ」


「これ美味しいねー、シェリル」


「美味すぎるよー」



フィリア王女の感想に対して、嫁ズは語彙力が足りないぞー。それでも可愛いから許しちゃうけど笑




“ ワイバーンの煮込み デミグラス風 ”




この料理に名前を付けるならこんな感じだ。


ワイバーンの肉はステーキでもいいかと思ったけど、ステーキならレッドボアでも十分だ。それならちょうど継ぎ足しで作っていたデミグラスの中に入れてしまって、ビーフシチューみたいにしたら面白いんじゃないかと思ったのだが、みんなの反応を見た感じだとそれがどうやら当たったようだ。



「せっかくアイゼンの幻陽が提供してくれた貴重な食材なので、喜んでもらえてよかったです。長い時間かけて作った甲斐がありましたよ」


「そんなに長い時間かかったの?」


「うん。このソースを作るだけでも何日かかったことか...」



俺はフィリア王女の問いかけに対して正直に答えた。



「そっか。じゃあ王城の料理人には厳しいのかな。せっかくの革命的な料理なのに...」


「革命的か。フィリアも上手いこと言うようになったな。だが、それは間違ってねえ。なぁ、オルテガ?」


「そうだな」



これだけ高い評価をされたからレシピの話になるかと思ったけど、誰も何も言わなかったな。

まぁレシピがあったところで再現するのは難しいだろうけど。俺でも同じ味を作る自信はないしな苦笑


今の味が残ってるうちに、エルピスに献上しておいたほうがいいか?


そういえばこの前、急に帰らされたけどあの後大丈夫だったのかな...。




不思議なもので、一度思い出したらエルピスのことがずっと気になってしまう。



「エルピス、聞こえる?」



頭の中で問いかけても反応がない。

いよいよ、本格的にヤバいのかな?


みんなに食後のプリンを出した後、俺はキッチンまで戻ってエルピスにもプリンを献上しようと祈りを捧げたところ、呆気なくプリンは消えた。


どうやらプリンは食べるらしい。


何があったか知らないけど、ここの女子達のようにプリンを食べて元気になってくれればいいな。






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