第194話 唖然
ヒーラの店の中には、当然のようにフィリア王女がいた。
「フィリア王女、相変わらず入り浸ってるんですね笑」
「そんなことないもん!! イルマさんが寂しがってるだろうから来てあげただけだもん!!」
「よく言うよ。暇さえあれば『もう帰って来るかな?』ってずっと言ってたくせに!!」
「そう言うイルマさんだって『シーマの料理を食べたい』ってずっと言ってたじゃない!!」
何でこの2人は言い争ってるの?
頬を膨らませてプンプンしているフィリア王女も可愛いな。
…なんて思ってる場合じゃないな。
「2人とも静かにして下さいよ。今日は偶然再会したお客さんも連れてきてるんですから…」
「「えっ、お客さん?」」
「はい。えっと、俺の宿屋の常連だった冒険者パーティー『エリシオン』のクリスさんとノエルさんです」
「…クリスです」
「…ノエルです」
「あら、これまた美男美女だこと」
「ほんとね。冒険者にしておくのは惜しいわね」
いやいや、確かにエリシオンの2人は美男美女だけどもさー。そんなことよりあんた達は自己紹介してよ。
「クリスさんもノエルさんも、イルマさんのことはご存知なんですよね?」
「あぁ、何度かこの店に来てるからね」
「そうなのかい? こんな色男忘れるはずがないんだけどねー」
「もう歳なんだよ」
「もうフィリアは余計なこと言うんじゃないよ!!」
ふぅー。
誰か止めてくんないかな…。
「あと、こちらにお座りの淑女は、この国の第三王女のフィリア様です…笑」
「「…第三王女様…」」
「ちょっとシーマさん、笑いながらの紹介って酷くない?」
「すみません。使い慣れない言葉だったものでつい苦笑」
だってしょうがないじゃん。
笑っちゃうんだもん。
「クリスさんとノエルさんって言ったかしら? 私は第三王女のフィリアです。もうすぐ公表されることですが、『ディオランサ』の後ろ盾となると同時に、シーマさんの3人目のお嫁さんになります」
「「「「はぁ?」」」」
ちょっと待て。
そんなこと決まってないぞ。
嫁ズとエリシオンがポカーンとしてるこの空気をどうしてくれるんだよ!!
「フィリア王女。嘘はいけませんよ」
「シーマさんも甘いわね。こうやって言い続けてればいつか現実になるのよ!!」
いやいや、フィリア王女。そんなことをドヤ顔で言われてもな…。
「でも、立場が違い過ぎますからねー。どう考えても現実的ではないですよねー」
「あら、シーマさん。もう忘れたの? あなたはもうすぐ貴族の仲間入りするのよ。立場の差なんてどんどん詰まるわよ」
「「「貴族?」」」
マジかー。
俺の準男爵への叙爵にはそんな意図があったかよ…。
あれ?
エリシオンはともかく、イルマさんには言ってなかったっけ?
まぁ驚くわな。
「貴族っていったって準男爵ですからね。あってないようなものですよ、きっと」
「フッフッフッ…それはどうかしらね」
うわぁー。
フィリア王女がスゲー悪い顔してるよ笑
これはまだ何か企んでそうだな。
俺はただ静かに、そして幸せに暮らせればそれでいいのに。
この先どうなることやら…。
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