第177話 褒賞



「ん? どうした? この内容じゃ不満か?」


「いえ、そうではなく、褒賞の内容に対しての理解が及ばなかっただけにございます」



ゼスト国王の言葉で我に帰った俺は、素直にそのことをゼスト国王に伝える。



「そうか? これでもあまり問題が出ないように、いろいろと調整したんだがな。なぁ、ゼット」


「はい。白金貨はともかく、冒険者ランクについても本当は指名依頼が出来るBランクにと思いましたが、王都のギルド長にも相談してCランクに落ち着きました。叙爵については騎士爵を飛ばしての準男爵なので、他の貴族からいろいろ言われるかもしれませんが、そこはフィリアが後ろ盾になることで我慢して貰おうかと」


「だそうだ。これでいいか、シーマよ」


「ゼット王子様、事細かな説明をいただきありがとうございました。フィリア王女様はいかがですか?」



ゼット王子の説明は納得のいくものではあったが、フィリア王女の意思を確認しておく必要があるので念の為聞いてみた。



「今回救われた私としましてはもう少し上げてもいいかと思いますが、お父様とお兄様がお決めになったことに対して異論はございません」


「ゼスト国王様、この度の褒賞有難く頂戴させていただこうと思います。が、誠に勝手ながら1つお願いがございます」


「何だ?」


「Cランクへの昇格と準男爵への叙爵については少しの間待っていただくわけにはいかないでしょうか」


「それには何か理由があるのかな?」



俺がお願いを口にしたところで、今まで黙っていたゼスト国王の隣りの男性が声をかけてきた。見た感じがゼスト国王と同じくらいの年齢なのかな?真面目そうで文官っぽいので宰相様だったりするのかな?

誰なのかを聞きたいけど、聞けるような雰囲気じゃないんだよな…。



「はい。私たちは実力的にはDランクですので、発表までに時間をいただけるのなら、それまでに少しでも強くなっておきたいのです」


「なるほどな。そういう考えは嫌いじゃない。俺は賛成だ。ゼスト国王とラウロ宰相はどうなんだ?」



今度はゼスト国王の逆隣りの男性が答えた。こちらの方は雰囲気的にはゼスト国王に近いな。武力でのし上がってきた感じが半端ない。

でも、何だか誰かに似てるような気がするんだよな…。気のせいかな。

そうだ、今の言い方からすると、さっき質問した人がラウロ宰相ってことが分かったぞ。



「シュレム公爵がそう言うのであれば、俺も賛成しよう。それでいいかラウロ?」


「ゼスト国王にお任せします」


「シーマよ、そんな訳だ。その期間とはどのくらいだ? あまり長くは出来ないぞ?」



おー。

もう1人はシュレム公爵っていうのかー。ラウル宰相もだけど、フィリア王女絡みでこれから接することが多くなるかもしれないからな。覚えとこ。

あっ、そうだった。

期間かー。

本当はひと月欲しいけど、長いよな…。



「半月程いただければ有難いのですが」


「よし、半月待とう。ただ、半月後は有無を言わさずに発表だからな」


「わかりました。わがままを聞いていただきありがとうございます」


「まぁいい、気にするな。どっちみちシーマ達には強くなってもらわねばならんしな…」


「えっ?」


「お父様!!」


「あぁ、何でもない。こっちの話だ」



今のフィリア王女の突っかかり…

何だか嫌な予感がするな。

アイテムボックス絡みの依頼とかあるのかな…。



「今日のところはここまでだな。また何かあったら連絡する。これからもフィリアと共にこの国のために励んでくれ」


「もちろんです。これからもディオランサをよろしくお願いします」



俺たちはようやく謁見の間から解放された。




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