第178話 謁見後



「シーマさん、客間で待っててもらえるかしら。今後のことでお話がありますので」



謁見が終わり、退室しようとしたところでフィリア王女に声をかけられた。

何だろう?

ヒーラで話せないことなのかな?

俺としては落ち着かないから、一刻も早く王城を後にしたいんだけど…

さっきの強くならなければならないことと関係あるのかな?



「わかりました。帰らずにお待ちしております」



俺たちはまたキレカワ侍女の案内で客間に通された。

フィリア王女もすぐに現れた。



「イース、ありがとう。もう下がっていいわ」


「かしこまりました。部屋の外で待機しております」



綺麗な所作をしてキレカワ侍女が客間を出て行った。

へぇー。

あの人の名前はイースっていうのか…。



「フィリア王女、先程の方は王女お付きの方なんですか?」


「「「…またぁ…」」」



ん?

何だ、この空気は?

もしかして俺、やっちゃった?



「まぁ、そうなんだけど…。もしかして嫁入りさせるつもり?」


「はぁ?」


「違うの? どうせ気に入っちゃったんでしょ?」


「………そんなことないですよ。ただ…」


「ただ?」


「綺麗だなーって思って……動きが」


「動き?」


「そう。もちろんイースさんそのものも綺麗なんだけど、ひとつひとつの動作が美しいなーって思ったんだよね。フィリア王女のお付きになるくらいだから、かなり修行したのかなーって」


「ふーん。本当にそれだけかしら。怪しいわね。でも、そう思うのも無理ないわ。イースの生まれはそれなりの貴族だからね」



げっ!!

貴族の娘かよ。

ハードル高いなー。

乗り越えるつもりはないけど。



「あっ、そうそう。この話はイースにも聞こえてるからね」


「何で?」


「彼女が扉に耳をくっつけてるからよ」



マジか!!

えらく原始的だな!!

っていうかフィリアさん、それ早く言おうよ。

今度から冷たくされそうじゃん!!

あっ、でも…

たまには冷たくあしらわれるのもいいかも…。


おほんっ

そんな事考えたらダメだよね。

そろそろ、本題に入らないと。



「もちろん、私たちの間に危険があるとは思ってないけど、それがココでの彼女の仕事なのよ。悪く思わないでね」


「それでフィリア王女、お話というのは?」


「あぁ、あの言葉に特に意味はないわ」


「はい?」


「ソニアお母様やシエラお姉様とソフィアお姉様には、まだあなたたちに近づいてもらいたくなかっただけよ」


「はぁ」



やっぱり何か話があるってわけじゃなかったのか。でも、フィリア王女の中には、彼女らを俺たちに近づけたくない理由があるんだ。



その理由は聞きたいけど聞けないな。




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