第161話 友達



エルピスへの献上が終わった後、嫁ズはイルマさんとフィリア王女とワイワイ喋っていた。

しかし俺は、今日は燻製をするつもりだったので、一人で外に出てきた。


すると、シェスターが寄ってきてスリスリしてきたので、しばらく撫でてあげたら満足したのか、また自分の場所へ戻っていった。

そういえば、ここ2~3日シェスターは動いてないんだな。近場でもいいからどこかへ出掛けようかな。

体がなまらないように狩りに行くか。

後で嫁ズに相談だな。



大きな鍋を3つほど出して準備が出来たら、下処理した肉を入れて、燻製を進めていく。

とはいっても、燻製なので時間がかかるから、その間にも俺はアイテムボックスから屋台を出して、焼き鳥用の仕込みだけをしてアイテムボックスにどんどん入れていく。

今ここで焼いてしまうと匂いが周囲に立ち込めて近所迷惑になるので、いつでも焼けるようにしておくだけだ。

ちなみに燻製のほうが匂いはスゴいのだが、しっかりとフタをして漏れないように対策している。



「相変わらず変わった調理してるわね」



女子会トークが一段落したのか、フィリア王女が外に出てきて声を掛けてきた。

他の3人はというと、イルマさんのポーション作りを嫁ズが手伝っているらしい。何でも、女子会トーク中に今日の分を作ってないことを思い出して、急に作り出したらしい。


「そんなに変わってますか?」


「そうよ。だって何してるのかさえ分からないもん。それで、これは何をしてるの?」


「これは塩漬けした肉を、煙で燻すという調理方法なんです。今日は2種類の肉ですが、これをすることによって美味しくなることはもちろん、ある程度保存も効くようになります。ただ、下処理を含め、やたらと時間はかかりますけどね」


「確かにそのようね」


「えぇ。だから、時間のある時にしか出来ないんですよ笑」


「出来上がったものはお昼にいただくことは出来るのかしら?」


「出来ますけど、そのうちの1つはもう既にフィリア王女は食してますよ?」


「えっ?」


「コレのことですよ」



俺はアイテムボックスに少しだけ残っていたベーコンを取り出して、フィリア王女に見せた。



「これは確か、私が一番最初に食べたシーマさんの料理。まさかこれがこんな風に調理されていたなんて…」


「驚きましたか?」


「そりゃあね。でも、もう1つのほうは私も食べたことがないんでしょ?」


「おそらく。俺も初めて作ってますので、俺以外に作ってる人でもいない限りは」


「じゃあ、それはお昼のお楽しみってわけね」


「それはそうと、いくらイルマさんのところとはいえ、そんなに長居しちゃっても大丈夫なんですか?」


「さっきまではアルテが外で待機してたけど、シーマさんたちが今日は出掛けないことがわかったから帰らせたわ。また夕方頃に迎えに来るけど。ダメだったかしら?」


「いえ、確かに今日はどこにも出掛けませんが、俺はおそらくずっとここで料理してるだけですよ?」


「それでも、城にいるより全然マシよ。それにここにはセレナやシェリルもいるから…」



イルマさんがいるから、ではなく

セレナとシェリルがいるから、と言ったな。



「以前に同年代の友達がいないと言ってましたよね。セレナやシェリルはフィリア王女の友達として認められたんでしょうか」


「それはそうよ。2人とも私とは育った環境も、見てきた景色も全然違うわ。でもね、あの2人と話していると、そんなの『 ただそれだけのこと』なのよ。

1人の女性として生きた時間は変わらない。だから、感じてることや不安なことは一緒なの。だから話していて楽しい。今までこんなことなかったから…」


「そう言ってもらえると、あの2人も嬉しいんじゃないないですかね。俺も嬉しいですし」


「だからこそ、この先をどうしようかなってすごく考えちゃうのよね。王女としては後ろ盾になれるけど、友達として何が出来るのか…」


「そんなのご自分のやりたいようにやればいいじゃないですか」


「えっ?!」


「せっかくこの前ソニア王妃相手に自由を勝ち取ったんですから、ご自分が1番楽しいと思えることをすればいいんですよ。それを邪魔するものがあったら…」


「…」


「その時は、俺たちが一緒に戦います」


「どうして…」


「友達が困っていたら助けるでしょ。たとえそれがどんなに大きな組織であっても戦います。セレナもシェリルも同じことを言うと思いますよ」


「ありがとう…シーマさん」





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