第157話 化粧水



翌朝。

軽い朝食を済ませた後、セレナはイルマさんのお手伝いに、シェリルは商人として街にくり出したので、俺は昨日の煮込みの続きをしながら、化粧水の試作品を作ることにした。


セレナに頼んで、もらった薬草を見ながら考える。


薬草の成分を凝縮したいなら、一度乾燥させたほうがいいような気もするが、今回は化粧水だから鮮度の良い薬草をフレッシュなまま使うというのもアリだ。


確かイルマさんは薬草をすり潰してからポーションにしていたから、化粧水については煮出してみようかな。


まずは鍋に水と薬草とレモンの皮を入れて煮てみる。レモンの皮を一緒に入れてみたのは、前の世界の知識でいろんな成分があることを知っていたので、何となくイイ感じになりそうな気がしたからだ。

十分に煮出したら薬草とレモンの皮を取り出してその煮汁を冷ます。その間に、さっきは使わなかったレモンの中身を軽く搾っておく。ガッツリ絞らないのは使った時にヒリヒリしないようにするためだ。


そして、ここからが本番だ。


煮汁とレモンの搾り汁を、魔力を込めながら調合スキルを使ってゆっくりと丁寧に混ぜ合わせていく。



ポンッ



えっ?

火を使ってるわけでもないのに音がしたと同時に少しの煙が発生した。


何で?


まぁ、如何せん初めてだしな。

失敗なら失敗でしょうがないや。

とりあえず鑑定、鑑定と…。



『高級化粧水(レモンの香り)』new!!



ありゃー!!

やっちまったよー。

単純に成功したことは嬉しいけど、何も高級でなくてもいいのにな…。

しかも、この世界で初だからnew!!とか付いてるし…。

また俺が狙われる要素が増えちゃったじゃん!!


でも…。

せっかくだから俺の力作を嫁ズに使ってもらいたいよなー。


イルマさんとフィリア王女に話すかどうかについては、効果を見てから嫁ズと相談しながら決めることにしよう。いくら高級品とは言え、まさか1日というか1回だけでは効果は分かりにくいだろう。



「シーマくん、私にくれてもいいんだけど!!」


おぉっと。

エルピス、急に俺の頭の中に話しかけてこないでよ。

っていうか、バッチリ見られたのか…。

逃げ場がないな、こりゃ。


「さぁ、早く早く!!」


いやいや、嫁ズが先ですから。

いくらエルピスが神でもこれだけは譲れないよ。


「チッ!! 」


おーい、エルピスさーん。

最近舌打ちが多くないですかー?


「…」


今度は黙秘か…。

だんだんと女神らしからぬ行動が増えてきたよな。

よくある異世界ものの話でありがちな展開なのは、上位の神々に叱られるパターンなんだよなー。


「シーマくん。それ以上の詮索はダメよ!!」


…。


「私が悪かったわ。ごめんなさい」


…。

ちょっとは反省してるのかな?


「でもね、シーマくん。シーマくんがすんなり化粧水をくれていたらこんなことには…」


やっぱり反省してないな。

創造神って誰だったっけな…。


「ストーーーーーップ!!」


…。


「お願いです。それだけは勘弁して下さい」


…。

じゃあ、エルピスの化粧水は今度作った時ということでいいね?


「ぐぬぬ……。いい……です」


全く、最初から我慢してくれればいいのに。もともとこの世界にはなかったものなんだからさー。



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