第143話 先輩後輩
「料理で思い出したんですけど、グランツのシンシアさんがエテルナさんによろしく言ってましたよ」
「ウゲッ!!」
ん?!
何だ今のエテルナさんの反応は。
仲のいい先輩後輩じゃないのか?
「シーマ、風魔亭に泊まったの?」
「えぇ。旅の途中におすすめされまして、両親の関係者だとは思ってもなかったですが、すごくお世話になりましたね」
「あ、そうなの…。料理作ってとか言われなかった?」
何か少しずつエテルナさんがビクついてるな。
何となくだけど、シンシアさんに俺の料理を自慢したのはいいけど、俺が風魔亭に泊まるとは思ってもいなかったんだろうなー。
こんなエテルナさんは滅多に見れないからもう少し弄りたいな笑
「あー、そういえば言われましたね。エテルナにあげた甘いパンを作れって」
「あちゃー」
あちゃーって笑
オモロいな。もうちょっと引っ張ろ笑
「もちろん作ってあげましたけどね。あと、新しいデザートも」
「え?! 新しいデザートなんて私知らないけど!」
おっ!ちょっと焦ってきたな。
さすがに可哀想だからもう終わりにしてあげようかな笑
「元々はセレナのために作ったんですがシンシアさんに奪われちゃいましてね。食べたら人格が変わっちゃうくらい喜んでくれましたよ」
「ねぇシーマ。そのデザートを今度作ってくれないかな…」
「材料さえあれば作れると思いますので、近いうちに探しておきますよ」
「お願いね。それを食べないとシンシアさんに負けてる気になるのよ…」
あー、やっぱり根本的な問題はコレなんだろうな。
どこの世界にもマウントを取ろうとする人っているのか…。
「そもそもですが、シンシアさんとエテルナさんは先輩後輩の間柄なんですよね?」
「そうよ。でもね、お互いに負けず嫌いなのよ。シンシアさんは常に私の先を行こうとするの…しかもそれが私に分かるように。私にはそれが我慢出来なくて張り合おうとしちゃうのよ」
「…別に先に行かれたっていいじゃないですか」
「えっ?!」
「シンシアさんはシンシアさん、エテルナさんはエテルナさんでしょ」
「…」
「シンシアさんが結婚して子供を産んだところで、エテルナさんの冒険者としての地位にたどり着ける訳じゃない。それくらいもうお2人を取り巻く世界が違うんですから、これからは争うことじゃなくてお互いのことを応援するくらいの心意気を持って下さい」
「ふぅ…。確かにシーマの言う通りかもしれないわね。私なりに努力してみるわ…。でも…」
「えっ?!」
「デザートは作ってね笑」
「ハハハッ、わかりました!」
俺とエテルナさんのやり取りを黙って見ていた他のみんなも、どこかホッとしたような表情を見せている。
まぁ言いたいことは言ったのでこれでよかったのかな。
俺の料理で争われても困るもんな…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます