第136話 駆け引き



「なるほどね。ココに集まった人が少なかったのは、シーマくんのアイテムボックスが理由だったんだね」


「そうですよ。十分過ぎる理由でしょ、お兄様?」


「そうだね。もし僕が何かお願いしたいことがあったら頼んでもいいのかな?」


「それはシーマさん次第ですが、まずは私フィリアを通して下さい。お父様とお兄様が直接お願いしてはシーマさんも断われないでしょう。だから、私を通してお願いして下さい。そうしないと、シーマさんはもちろん、仲良くしてくれたセレナやシェリルに顔向け出来ません」


「「フィリア王女様...」」



フィリア王女の言葉に、セレナとシェリルが感動してる。



「そうね。よく言ったわフィリア。あなたもいい女になったわね。シーマくんのおかげなのかしら?」


「それはわかりませんが、ずっと一緒にいたいって思ったのはシーマさんが初めてです」


「そう...あなたがそこまで...ね。じゃあフィリアに取られちゃう前にセレスと会ってもらおうかしら?」


「…お義母様、コレが何かお分かりになりますか? 」


「その瓶と色は...まさかローヤルゼリー? あなた、それをどうやって手に入れたの!!」


「さすがはお義母様ですわ。見ただけでわかりますのね。コレはシーマさんが私に下さった大切なものですが、条件次第でお義母様に差し上げますわ」


「いいでしょう。条件を言ってごらんなさい」


「私は自由をいただきたいのです。結婚や住まい、公務などを私の自由にさせて欲しいのです。そして、私がディオランサの後ろ盾になることの許可をいただきたく」



「...ふぅ」



ソニア王妃は一つ深呼吸をした。



「フィリア。あなた本当に変わったわね。話の持っていきかたといい、ゼストではなく私を落としに来たことといい、セレスよりも王女っぽくなった。もったいないわ...。

でも、いいでしょう。分かりました。あなたの思う通りにやりなさい。ただし、なるべくこの国の発展になるように動くのよ」


「ご理解いただきありがとうございました。この国のためにこれからも努力して参ります」



俺はとにかく驚いた。

フィリア王女がそんなことを考えていたとは…。


何はともあれ、これでようやくひと息つけそうだな。

なーんて思っていたら、ソニア王妃が今度はゼット王子に向けて話し始めた。



「ゼット、いいモノが見れたでしょ? これが駆け引きなのよ。フィリアは何故ゼストではなく私に来たのか。あなたも考えてみることね。恐らくだけど、ここまでの流れは全てフィリアの思い描いた通りでしょうね。まったく大したものよ」


「お母様相手に駆け引きをするなんて、以前のフィリアには考えられませんでした。それほどまでに大切で失いたくないものがあったんでしょうね。しかしながら僕にはまだそれがない」


「そうね。その考えで間違ってないわ。でもゼットの周りには婚約者を含めていろんな人がいるの。だから、たくさんお話をしなさい。そして、政治的なことも含めてどんな人を近くに置けばいいのかをよく考えてみなさい」


「わかりました。精進します」



よし。

今度こそ、ひと息つけそうだな。



「それで、シーマくん。あなたは何者?」



ひと息つけるどころじゃないじゃん!



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