第113話 執事のお願い



「シーマ殿、ちょっとお話出来ますかな?」



見張り番が俺へと交代する時に、アルテさんから声を掛けられた。アルテさんもだいぶ疲れてるんだから寝ればいいのに...。恐らくそれを差し置いてでも確認したいことなどがあるんだろうな。王女様の執事だもんな、無理もない。ましてや一緒に寝泊まりしてるのが素性の分からない冒険者なんだからなおさらだ。



「えぇ、構わないですよ。何かありましたか?」


「いえいえ、何もありませんでした。というか、何もなかったからお願いがあるんです。」


「っと言いますと?」


「出来ればでいいんですが、王都まではどこの街にも寄らずに帰れないかと思いまして...。

というのもですね、本当は途中の街に寄ったほうが安全だとは思うのですが、王女が寄ったり泊まったりするとなると騒ぎになります。そこに騎士や王家の馬車がいないと変な噂が立つ可能性が高いのです。

しかし、シーマ殿と行動を共にすれば食事も宿も心配なさそうですので、もちろん、王都に着いたらそれなりの報酬は払いますので、考えていただけないでしょうか」


「…なるほど。言われてみれば確かにアルテさんの言うことも一理ありますね。

分かりました。ただ、返事は明日セレナとシェリルに話してからにさせて下さい」


「もちろん、それで構いません。それではよろしくお願いします」



俺としては王女様の意向ならそれで構わないと思うんだが、セレナとシェリルにも聞いたほうがいいだろう。

ただ、食糧が持つかどうかなんだよなー。アイテムボックスにたんまり抱えてるとはいえ限りはある。途中で狩りをしながら行くしかないよな…。

それと、この際ついでに気になってたことを聞いてみるか。



「あっ、アルテさん!」


「は、はい。何でしょう?」


「さっきの肉の細工、よく気が付きましたね」


「レッドボアの肉は散々食べてきましたけど、あんなに柔らかくはなかったんです。切れ込みも多かったし、きっと何かしたんだろうなって思っただけですよ」


「なるほど。さすがです」


「いやいや私のほうこそ、とても美味しいものをいただきました。今後も姫様共々、楽しませてもらいますよ笑」


「あまり期待されてしまうと困っちゃいますが、自分も楽しみながら作ってみますよ笑」


「長く邪魔してすみませんでしたな。交代の時に呼んで下さい。それでは」



アルテさんはそう言ってリビングを出ていった。


最初話があるって言われた時はビックリしたけど、何とか最後は笑って終われたよー。よかったー。


とりあえずは明日の朝食の準備とハンバーグの仕込みを済ませておこうかな。



そういえば、セレナとシェリルは王女様と楽しくやれてんのかな?

セレナはともかく、シェリルにとって王女様との繋がりはとても大きな意味を持つ。当然本人も分かってるとは思うけど、唯一心配なのは焦りだ。上手くやってくれてればいいけど…な。



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