第110話 黒幕?



襲われた現場に長居すると、血の匂いで魔物が寄ってきたりして良いことはないので、とりあえずその場を後にして、少し走ったところで家を出して休憩してもらうことにした。

まさかアイテムボックスから家が出てくるとは思ってなかったようで、王女様も執事さんもさすがに驚いていた。



「シーマさん、いったいあなたは何者ですか?...モグモグ」


「今は普通の冒険者ですよ笑」


「アイテムボックスから家が出てくるわ、こんなに可愛い奥さんが2人もいるわ...モグモグ」


「姫様!! 食べながら喋らないって何回言えば分かるんですか!!」


「別にいいじゃない。今はお城にいる訳じゃないんだし...。そうそう、この料理もよ。なんでこんなに美味しいの?...モグモグ」


「「...」」



食べながら喋る王女様って新鮮だな。

嫁ズも絶句してるし笑

でも執事としては怒るわな。そら当然。

ちなみにフィリア王女が食べているのはブラックバードの塩唐揚げだ。



「じゃあ何で普通の冒険者が王都に向かってるの?」


「アイゼンの幻陽ってパーティーに、王都に来るように言われたからですね」


「えっ、ちょっと待って?! …あなた達ってもしかしてグランツから来た?」


「そうです。よく知ってますね笑」


「そりゃそうよ。あなた達を呼んだのは私だもん!」


「「「はい?!」」」


「自分で言うのも何だけど、私はよくアイゼンの幻陽に指名依頼を出すから仲がいいのよ。

それでね、しばらくの間あの人達がコスタから動かなかったから、その理由を聞いたのよ。そしたら、飯が美味くて精龍亭って宿から動けなかったって...」


「「...」」


「じゃあ精龍亭に連れて行ってって言ったら、今は休業して冒険者やってるって言うんで、王都まで呼んじゃおうってなったって訳なの...」


「「…」」



やっぱり飯だったかー!

あの人達のことだからそんな事だろうとは思ってたけど、まさか王女様絡みだったとは...。

先に言えよーって、

そんなこと言えるわけないか…笑



「ごめんなさい。今の話...怒った?」


「いえいえ全然。ただ、ビックリはしましたけど苦笑」


「ねぇシーマさん、アイゼンの幻陽はあなた達のことをどこまで知ってるの?」


「アイテムボックスのことは知りません。ダミーのアイテムバッグだと思ってるはずです。それと、セレナのことは知ってますが、シェリルのことは知りません。」


「料理は?」


「これはブラックバードですが、全く同じ調理方法のロックバードは食べてますね」


「違うの?」


「結構違うと思いますよ。ロックバードのほうが肉に旨みが多いような気がします。ほんの少ししか残ってないですが、食べてみます?」


「良ければ1個だけでも」



本当に少ししか残ってなかったけど、あってよかったなー。この流れだとロックバード狩りに行かされそうだったもんな。俺らのランク的にアレは無理だから。

俺が皿ごと出したら、すぐに手を伸ばして口にしたよ...。

食いしん坊の王女様なのかな。



「どうです?」


「確かに違うわね。ロックバードのほうが美味しいわ。でも、これが逆だったらブラックバードじゃ物足りないのかしら?」


「どうなんでしょうね。ただ、作り手としては比べてもらうよりは、それぞれを別物として楽しんでもらいたいですけどね笑」


「ねぇシーマさん、本当にあなた何者なの?笑」


「「「笑」」」



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