第101話 焼鳥
「ねぇシーマ、1つお願いがあるんだけど」
「ん? 何だシェリル?」
家を再度収納し、買い出しのために俺たちはグランツの市場へ向かっていたが、その途中でシェリルが俺に聞いてきた。
「アイラでも作れるようなブラックバードの料理ってないかな?」
「あっ忘れてた。さっき放っておけないとか言ったばかりなのに...」
「シーマ、あの串はどう?」
「串?」
「あれ? シェリルはまだ食べてなかったっけ? はい、これ」
俺はアイテムボックスからセレナに勧められた鳥皮串を取ってシェリルに差し出すと、当然のようにすぐ食べ始めた。
「ちょっと変わった感じだけど美味しいね。これくらいならアイラでも作れるかな...」
「それは皮の部分だからな。肉の部分を刺して焼いたっていいんだぞ。焼くだけだからアイラでも大丈夫だろ?」
「...たぶん大丈夫だと思う」
「よし。それじゃ今日の夕方、シェリルの家で焼いてみようか。それでアイラにも挑戦してもらおう」
その夜、シェリルの家で待ってるとアイラがやって来た。
ホントにブラックバードへの執着は半端ないものがあるな。
「それじゃアイラ、早速料理してみようか」
「わかりました」
「まずはこの肉をひと口くらいの大きさに切ってみよう。このくらいがいいかな」
俺は見本として1つだけ切り、後はアイラに同じように切るように促した。
「イタッ!!」
「手を切ったのかアイラ? ちょっと見せてごらん」
アイラの指から出血してるのを見て、俺はバイ菌が入らないようにすぐに指を咥えてその血を吸った。
「「「!!」」」
「よし。セレナ、ヒールを頼む。ん? セレナ?」
「...ヒール」
何だろう。セレナがふてくされてる。
ヒールまでは必要なかったか?
とりあえず治ったからよしとしよう。
「アイラ、切り終わった肉はこのお皿に入れて、エールと塩で揉み込むんだ」
俺はアイラの手を取って揉み込む。敢えて言わないがこれはバックハグ状態だ。そして、アイラの髪のいい匂いが何とも...。
「...ねぇセレナ、料理教えるだけなのにあんなにくっつかなくても良くない?」
「それよシェリル。シーマもシーマよね!」
あっヤバい。嫁ズがキレかかってる。
ちょっと丁寧にやり過ぎたかな。
「アイラ、最後にこれを『ヌギ』と一緒に焼いたら完成だ。焦げ目がつくくらい焼いちゃっていいから」
今回作るのは『串なしのネギま』だ。
市場にネギが『ヌギ』として置いてあったので、これに決めた感じだ。
どうやら無事に焼けたようなので、フライパンから皿に盛り、早速味見してみるが問題ない。イメージ通りにエールで少し柔らかく仕上がった。
「アイラも食べてみるか?」
「はい!」
「まだ熱いからフーフーしてから、じゃああーんして」
「はい、あー「「ちょっと待てコラ!!」」ん...チッ!!」
あ、これはやっぱりやり過ぎだったかな?
嫁ズからは「ちょっと待て」の後に「コラ」って聞こえたような...。
「ハイハイ、ちょっといいかしら?」
手をパンパン叩きながら、ステラさんが入ってきた。何ていいタイミング!!
「もう少しでフーフーあーんの最強コンボだったのに...」
...。
アイラも戻っておいで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます