第64話 魔力



フィデールに来て最初の朝。


それにも関わらず、なかなか濃い夜を過ごした為に2人とも寝坊して、朝食を食べ損ねてしまった。

フィデールの宿食を楽しみにしてただけに残念だが、過ぎてしまったことはしょうがない。


とりあえず予定通りに、冒険者ギルドに来てみたのだが、そこには驚きの光景が広がっていた。


獣人がいるのだ。


それも多数。

さすがは国境の街だと言わざるを得ないな。他の街ではごくたまにしか見ないから、人間も獣人も普通にしてることが新鮮だった。


壁に貼ってある依頼書については、他の冒険者ギルドと変わらない感じではあったが、山賊の討伐依頼が他と比べて多いような気がした。フィデールに来る時は山賊が出るような感じはなかったけど、俺たちは3人旅だ。注意しておく必要があるな。



そして、そんなことを思いながら辺りを見回していると、端っこに置いてある魔道具が気になった。



「おう、お前たちコレが気になるってことは初めてこの街に来たのか?」



近くにいた冒険者が声をかけてきた。



「えぇ、初めてです。コレは何の魔道具なんですか?」


「これはな魔力量を測る魔道具なんだよ。機械に手を置いたらランプが光るんだよ。その光の強さによって魔力の量が分かるってやつだ。ココは国境の街だから、珍しいものも入ってくる。ギルドが名物になればと冒険者のために購入したらしいぜ」



へぇー。便利だな。

鑑定でもステータスには魔力は表れないもんなー。

ん?

鑑定のレベルが上がればステータスとして見えるのかな?

まぁいいや。出来ないことを考えてもしょうがない。



「試してみていいですか?」


「おう、やってみろよ」



俺は魔道具に手を置いてみた。

するとランプはすぐに点灯した。

暗くはないが明るくもない。

そんな感じだ。



「おっ、光ったな! 中々の魔力量だがまだまだだな。」



そっか。これでまだまだなのか。

セレナはどうなんだろう。



「セレナもやってみれば?」


「うん。やってみる!」



セレナが手を置くと当然のようにランプは点灯した。

点灯はしたんだが…、

なんか俺よりも光が強くないか?



「おー、お嬢ちゃんのほうがランプの光が明るいだろ。坊主より魔力はあるってことだ」



そう言われるや否やセレナのほうを見ると、『 どうだ!』と言わんばかりのドヤ顔をしている…。

俺よりも魔力量が多いのがうれしかったんだろうな。

わかりやすいよ、セレナ。



魔力量が分かったところで、説明してくれた冒険者にお礼を言って、俺たちほ冒険者ギルドを出た。



魔力か…。

確か元の世界の物語での知識では、毎日魔力を使い切れば魔力量は上がるらしいよなー。魔石に魔力を注ぎ込めばいいみたいな話だったような…。


今はまだ護衛依頼中だから無理だけど、グランツに戻ったら試しにやってみようかな。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る