第63話 フィデール



「ここがフィデールか」


「シーマさんたちは普段はどこで活動してるの?」


「俺たちは産まれてからずっとコスタにいたんだ。グランツに来たのはつい最近のことだよ」


「それなら、フィデールの街の規模はコスタとグランツのちょうど中間くらいだと思ってくれればいいよ」


「確かにそれくらいかもしれないわね」


「ところで、今日と明日泊まる宿はボクと一緒のところでもいい?」


「あぁ、問題ない。むしろお願いしたいくらいだ」


「初めて来る街だものね。頼ってばかりで悪いけどシェリルに任せるわ」


「大丈夫。ボクに任せてって言いたいところだけど、宿はルート商会が経営してる宿なんだよねー」


「フフフ、益々信用出来るじゃない」


「アハハ」



知らないうちにセレナとシェリルもよく喋るようになったな。いい傾向だ。グランツに着く頃にはもっと親しくなっていることだろう。

そんな矢先、宿に着くなりシェリルが聞いてきた。



「シーマさんとセレナさんは同じ部屋がいいの?」


「いや…「うん。出来ればそうして」」


「…」



俺が別にしたほうがいいかと思ってたら、セレナが食い気味に否定してきた。その様子にシェリルが少し困惑しているようだ。

そういえば、この依頼を受けてから2人きりにはならなかったからな。ちょっとは甘えさせてやるか。



「悪いなシェリル。セレナと同じ部屋で頼む」


「わかった…」



ん?

何だか、シェリルの歯切れが悪いな。

宿の売上として2部屋で取ってほしかったのかな?

そうだとしたら悪いことしたな。

でも今はセレナの気持ちを優先するしかないからなー。諦めてもらうしかない。



「それでシェリル、明日はどうする?」


「明日はまず商会の店に顔を出したいから、朝は別行動にして、お昼くらいに商会に来てもらおうかな。あっ、お昼は食べないでね。ご馳走するからさ」


「わかった。俺たちは冒険者ギルドに行って、時間が余ったら街を歩いてみるよ」


「それじゃ、また明日の昼に」


「あぁ」


「おやすみシェリル」


「うん…おやすみ」



そう言って立ち去ったシェリルの後ろ姿はどこか寂しげに映った。きっと3日間ずっと一緒にいたからなんだろうな。


そのせいかどうかはわからないが、その夜のセレナの甘えっぷりは凄かった。

とにかく、スゴかった❤


もうちょっとで大人の階段を…。



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