第10話

 あるところに仲の良い老夫婦が住んでいたのですが、二人共足腰が弱っており、外出するだけでも一苦労でした。その為、買い物をする時はなるべく通販を利用していました。

 近所のスーパーへ買いに行くにしても車を使う必要があるため、移動するのも大変ですし荷物を持って歩くとなると更に疲れてしまいます。ですから基本的にはネット注文に頼るようにしていたのです。


 そんなある時のことです。いつものようにパソコンを操作していると、ある広告を見つけました。それは犬の里親募集に関するものでしたが、その内容を読んでいるうちに興味を持ち始めたのです。というのもそこに書かれていたことがあまりにも魅力的だったからです。

 詳細を確認すると、なんでも自分の愛犬を亡くしてしまったそうで、新しい家族として迎えてくれる人を探しているのだそうです。また、その際にかかる費用は全て負担してくれるとのことでしたので、早速連絡してみることにしました。


 数日後、返信が来たので確認してみると、どうやら興味を持ってくれたようでした。詳しい話をしたいので一度会って話がしたいという内容でしたので、喜んで応じることにします。

 それから待ち合わせ場所や日時などを決めて、当日を待つことになりました。


 約束の日になると、指定された場所へ行きました。するとすでに相手が待っており、こちらに気付くと声をかけてきました。


「こんにちは、今日は来てくれてありがとう」


 そう言って爽やかな笑顔を浮かべながら挨拶してきたのですが、その顔を見た瞬間にドキッとしましたね。何故なら整った顔立ちをしていた上にスタイルも良かったので見惚れてしまったんです。

 こんな人が本当に私なんかを選んでくれるのだろうかという不安に駆られながらも会話を続けました。

 まずはお互いの自己紹介から始まりますが、やはり緊張しているのか上手く言葉が出てきません。それでも何とか会話を続けることで少しずつ慣れていくことが出来ました。

 そうして相手のことを理解することが出来た頃にはすっかり打ち解けることができていたのでホッと胸を撫で下ろしたものです。


 しばらくして一段落ついたところで本題に入りました。まず最初に条件について説明してもらい、それを了承した上で契約を交わして正式に引き取ることになったのです。その際、必要な書類を書いて提出した後、代金の支払いを済ませると晴れて我が家の一員となりましたね。これからよろしくお願いしますね。


 それからというもの、毎日楽しく過ごすことができています。もちろん大変なことも多いですが、それ以上に充実した日々を送っている気がしますね。

 ただ一つだけ残念なことがあるとすれば、それはあの子の名前を決めることが出来なかったことです。色々と考えてはみたものの、どれもしっくりこなくて悩んでいました。

 そんな中でふと思い浮かんだのがポチという名前でした。これなら可愛い響きだし良いかもしれないと思い、本人に聞いてみたところ気に入ったようであっさりと決まりました。それ以降はずっとその名で呼んでいます。

 最近では散歩も楽しめるようになったので一緒に出かけることも多くなり、その度に一緒に楽しんでいます。時には喧嘩することもあるけれど、お互いに譲り合って仲直りすることもありました。

 このように穏やかな日々を過ごすことで、今の生活に満足しています。これからもずっと一緒にいようね……

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