三 水壁の向こう側(後編)

 せきえん内層ないそう外層がいそう区切くぎたい青銀せいぎんちくよう水壁すいへきうえ架橋かきょうわたって。

 さらに、姉妹しまいおかまでた。

 ふる看板かんばんはずされずに、道路どうろわきかれている。

「『赤円ノ南東なんとうとう』?」

 ノアンちゃんがふとげた。

みなみひがしあいだ方角ほうがく

 南東よりもちょっと東にあるよ。でも、とう南東なんとうよりは南だね」

「じゃあ、おおまかに東南東でくな~い?

 ノアンもキュウもウチも、方向ほうこう音痴おんちでしょ~。

 きたと南さえわからなくなるんだから~。

 ゴーゴー」

ぼくごう

 八年はちねんさん、簡単かんたんだよ。

 東西とうざい南北なんぼくは四つにけた状態じょうたい

 それに、北東ほくとう南東なんとう南西なんせい北西ほくせいくわえると、はち方位ほうい

 さらに、ほく北東・とう北東・とう南東・なん南東・なん南西・西せい南西・西せい北西・ほく北西と加えて、十六じゅうろく方位。

 南東微東は三十二さんじゅうに方位のうちの一つ」

「かなり、むずかしいね。

 ネッサ、おぼえておいて」

方角ほうがくがわからなくても。

 そうだね。

 あとは、目印めじるしかな。

 きっと、姉妹が丘って地名ちめいがつくまえかり防衛ぼうえい区画くかくめいかな。

 建物たてもの番号ばんごう信号しんごう番号、道路どうろ標識ひょうしき

 ゲートのそとは、そういうものがいから。

 いま何時なんじ何分なんぷんか。

 自分じぶんがどこにいるか。

 太陽たいよう位置いちはどこか。

 そういう情報じょうほう大切たいせつになってる」

「ちょっと!ちょっと!ちょっと~!

 ゴーゴー、ウチ迷子まいごになる前提ぜんていはなしてない?」

「僕は五郷だよ。

 エウロパにまえに、かしこくなったんじゃない?」

「一つ賢くなってー♪三つ馬鹿ばかになるー♪」

「タンナ!

 うたってないで、最終さいしゅう学年がくねんらしくしなさい!」

 かえで先生がさわぎを大きくしそうな順々じゅんじゅんに一人で注意ちゅういしている。

 でも、タンサ君はねむるタイミングをうしなって、ぎゃくねむれなくなって、をギラギラさせて、興奮こうふんしている。

おれ名前なまえはタンサー♪タンナってだれー♪

 嗚呼ああー♪一つも賢くならないー♪だれかさーん♪」


 でも、バスのなか空気くうきわった。

 姉妹が丘霊園れいえんまえをバスがとおぎていく。

「あっ、火葬かそう

 ……うそでしょ?」

はずれまで来ると、あるんだよね。

 何か、しずかで、薄暗うすぐらくて、こわい。

 でも、今日きょうにぎやかね。

 ものすごいVIRGOのトラック。バイオドールがまた回収かいしゅうされたんだ。

 しばらくのあいだは、閉鎖へいさしてたのにね」

 ネッサちゃんが何におどろいたかわからなかったけれど、ノアンちゃんはとくに気にしていなかった。

「バイオドール、やさずにめてたのか?

 あんなの、赤円市にちこむなよなー」

雲上くもかみ君、それはちがう。

 バイオドールの掃討そうとう作戦さくせんでかなりの成果せいかがあったんだよ。

 おそらく、バイオドールの焼却しょうきゃく処分しょぶん遅延ちえんしているんだろうね」

「ゴーゴーでも、気づかないの?

 あのトラックぜ~んぶ、ウチ給食きゅうしょくはこんでた食糧しょくりょうよう配送はいそうしゃでしょ~。

 給食のトラック輸送として、二度と復活ふっかつしないでしいな~」

「だから、僕は五郷。

 衛生えいせいなバイオドールを積載せきさいした時点じてんで、それは無いよ。

 でも、ナンバープレートだってつけかえてるはずだよ。

 どうして、黄堂おうどうさんはづいたの?」

 もう、霊園は通り過ぎたけれど、ネッサちゃんはうしろをいたまま、ジーッと霊園のほうに目をらしている。

「ドライバーがおなじでしょ~。

 あの停車中の車間しゃかん距離きょりでしょ~。

 あと、配送業者ぎょうしゃめい荷台にだい側面そくめんに、デカデカとあるはず。

 なのに、かくしてる。

 よっぽど、隠したいんでしょうね~」

 ……。

 <まもなく、姉妹ゲートパーキングに到着とうちゃくします。

 大型おおがたバス駐車ちゅうしゃじょうより徒歩とほ一分いっぷんのトイレが利用りよう出来ます。

 トイレ休憩をませて、バスにもどってください>

 自動アナウンスが流れる。

 でも、姉妹ゲートパーキングからは白煙はくえんがっていた。

 規制きせいせんのテープや通行つうこうめの看板かんばん急遽きゅうきょ設置せっちされている。

 <バスは徐行じょこうしながら、目的こくてきエウロパへ向かいます。

 トイレ休憩はエウロパの仮設かせつトイレのみとなります>

 バン!

 バン!

 バン!

 わたしたちが利用するはずだった女子じょしトイレからも、爆発ばくはつおんと、白煙はくえん

 バスは減速げんそくしつつ姉妹ゲートパーキングからはなれてき、また続国道N一一号線に戻っていく。


 二度目のくろはし

 一度目の橋よりも、ながい。

 ということは、二度目の水壁すいへきはばのほうが一度目のほうよりもひろい。

 ザー。

 ザー。

 ザー。

 みずの流れる音。でも、かわの流れとちがうのは、野鳥やちょうさえずりやむしき、人間にんげん生活せいかつ音がなにこえないところ。

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ブルーマーキュリー【近未来SF×ディストピア×未知の植物を駆除しよう!】 雨 白紫(あめ しろむらさき) @ame-shiromurasaki

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