「そして密漁日の前日。事件が起きたの」

「何が」

「えっと、わたしのいいなずけの相手が私に夜這いをかけてきたのよ。もしかしたら密漁者を狙うハンターに捕まるか、殺されるかもしれない。その前にいいだろうってね。これがチャンスとでも思っていたのかしら。でも私には心に決めた人がいる。そうそこにいる私の旦那の。すぽぽぽぽまるよ」

 そんな名前なんかい。

「そしてすぽぽぽぽまると私との間に、ぽぽまるじゅにあであるぽぽじゅに、つまりあなたがうまれたのよ」

「俺の名前ぽぽじゅにかい!」

 いや、前の名前もあまり好きじゃなかったけど、今回の名前も……。

「いやなの?」

 母親は泣き出しそうな顔をしている。

「いや、いい名前だ」 

 実際、聞いた直後は驚いたが、よくよく聞いてみると響きはとてもよいし、かわいい。まるでゆるきゃらのようだ。

「そうっ、良かった」

 母親は安どのため息を吐き出して俺ににっこりとわらった。にっこりにほっこりした俺だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る