「実は私たちは駆け落ちしたの」

「へえ」

「村では決められた婚約者がいたわ。でもね。私たちは愛し合ってしまったのよ」

「ははっ」

「笑わないで。切実なることなのよ」

「それで、村の決まりを破った罰としてカバに私たちを殺させる刑を執行されるところだったの。でも私たちは怖くて逃げたわ。それにおなかにはあなたという大切な子供もいたの」

「そうなのか」

 ちなみにその時、天使が脳内に話しかけてきて、その時魂は誰になるかはルーレットが回っているような状態で最後にルーレットで俺が生まれることが決まったようだ。まあ、決定したのは天使だが。

「ええ、でも私たちは何のスキルもないのよ。村娘と村息子だったから、だから獲物はほとんど取れずにあなたにも栄養をうまくあげられたか疑問だわ」

 しかし、鏡を見てわかるが俺には十分な栄養はいきわたっている。それはどういうことなのだろうか。

「あなたの母親の特殊能力であなたに栄養がいきわたるようにしたのね」

 と天使の声。

「そんなことが出来るのか」

「人間死ぬ気になればんでも出来るわ」

 適当な。

 つまりは母親は自らの生命エネルギーを俺に分け与えていたようなものなのだろうか。なにそれ嬉しい。食べ物でとった栄養をほとんど俺に与えていたのか体内で。さすが母。この母しか出来ない芸当なのかもしれないけど。しかしそれを知れば、知ってしまえば母への感謝はもう揺るぎがないものになってしまっていた。俺の中で。それに村での決まりとはいえ、カバに食べさせるとかいう罰はどう考えても間違っている。そう断言できる。俺は一刻も早く両親を楽にさせたいとせつに思ったのであった。

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