そして俺は前世の武史の記憶を持ったまま、アフリカの母に育てられているのだがすぐに、母は俺の異変に気付いた。

「ねえ、この子、私たちの言葉理解していないかしら」

 俺は必死に赤ん坊らしく振る舞ったのだが、それは母からすれば血のつながった母からすればわが子の些細な表情の変化に気づかないわけではなかった。まあ、母によるかもしれないけど。

「この子……化け物だわ」

 俺は自分の人生がもう終わったと感じた。母親に化け物扱いされたのだ。それはすなわち虐待、あるいは淘汰を意味している。

「いい意味で」

 なんでやねん。俺は関西弁で突っ込んだ。母親は俺の事をいい意味で化け物だといったのである。

 そして俺の顔に自分の顔をすりすりした。

「この子は化け物よ。いい意味で。化け物なのよ!」

 いや、褒められている気がしない。とても。この母親とても……変。俺は無口なツンデレキャラのように突っ込みを入れた。

「今日の獲物をとってきたぞ」

 ちょうどその時父親が家に帰ってきた。今日の獲物はなんなのだろうか。昨日はネズミだった。

 手に握られていたのはミミズだった。いや、食えるのかな。

「あらっ、あなたにしては上出来ね」

 上出きなんかいっ! じゃあ昨日のネズミは?

「昨日は奇跡だったし」

 昨日は奇跡だったんだ……。俺この家で長生きできそうにない。というか村にいるんだよな。そうだよな。でも他の村人の声も聞こえないし、俺が生まれたというのに、だれも祝いにこないし。呪いにじゃないよ。祝いにだよ。

 少しさびしくなって俺はそんな一人ボケをかましたのだった。

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