さあ、今度はどんな交渉をしようかな。

「あなたの頭の中は分かっていますけど、それでも良いのですか」

「ああそうだった。まあ邪念を抱いていてもそれを悟られても別に良いです。関係ないですから。考えたところで」

「なるほど、竹を割ったような性格なのですね」

「竹はバンブーと言います。英語だと確か。サバイバル番組でやっていました」

「その情報は誰とくでしょうか」

「得とかは特にないです。ギャグです」

「減点です」

「さあ、記憶の維持以外の能力は何かありますか」

「そうですね。希望を言ってみてください」

「料理がうまくなりたいですね」

「ほかには」

「強くなりたいですね」

「イケメンにはなりたくないですか?」

「いや、別にあこがれは特にないです」

「そうですか。それならば強くなりたいという希望をかなえましょうか」

「料理は」

「それは……却下で」

「どうしてですか」

「なんですか。私が料理が下手だから上手くなられるとむかつくんですよ」

「天使もあれなんですね。嫉妬心があるんですね」

「嫉妬心ではないです。憎悪です」

「いったい料理に対してどんな恨みが」

「私が人間だった時の話です……」

 唐突に天使は語りだした。

「いったい何がというか、元は人間だったんだ」と一人ごとをつぶやいた。

「私が人間だった頃、料理を食べてもらった殿方に『くっそまずい。死ね。ぼけなす』と言われたんです」

「いや、そいつひどすぎだろ」

「私があやまって動物のエサを混ぜてしまったからですね。猫用と犬用のエサを」

「それはお前が悪いというかふつう間違えるか?」

「私がふつうじゃないとでも?」

 ぎろりとにらむ天使。

「普通です至って普通の天使ですよ。もちろん」

 と笑顔をつくろって言った。

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