第11話

あいつは死んだ。

まさか俺が殺すなんてな。


俺とずっと一緒にいたかった。


あいつは結婚した。

俺は結婚しなかった。


あいつの妻が亡くなって、また一緒にいられると思ったんだ。運命すら感じた。


簡単だ。

情報操作させ亡くなった妻の浮気の証拠を作らせ、バイトに金を渡す。


俺の母親がされたように、俺も金で動かした。




たくさんの人に恨まれる人生だった。

両親にすら「怖い」と言われてきた。


唯一理解してくれたアイツ。


警察が俺を発泡する前に。

俺は自分の頭を打とう。

性能のいい銃だから、痛さなんて感じず、アイツのとこにいけるだろう。


俺の方が悪人だが、一緒に地獄におちれるかな。


そうか。こんなにたんぽぽが咲く時期なんだな。暑いわけだ。


目の前が黄色に染まった。




***



「お母さん。あそこに私行ったことある気がする。更地になっている国道通りの」


少女は、たんぽぽの綿毛をふきながら母親に聞く。


「昔スーパーがあったの。覚えてるの?」

母親は心配そうに、娘の手を引いた。


「うん。私…助けてもらった気がする。男の人が寂しそうな顔してた」



「そう。忘れていいのよ。その人、悪い人なんだから」

「悪い人でも寂しそうな顔、するんだね」


見通しが良い道路になり、近くに小学校もできた。



あれからこの周辺では、死亡事故は一度も起きていない。

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