第9話
早く警察来てくれ。馬鹿げている。
太った女が死に「従わなれば殺される」空気が流れた。
よく見えなかったがあの男は、覆面すらしていない。
そして銃の腕はプロなんだろうと思わせる一撃だった。
韓国の流行ドラマに影響されたクレイジーなやつのせいで、こんなことになるなんて。
そういや、あの声、ミキさんの夫の声に似ていたな。流石に違うか。
ミキさんのことを密かに好きだった。
彼女は既婚者だし、後輩として飲みに連れてってもらうことが精一杯だった。
「2人でもう一軒行きましょうよ」と言ってもいつも、
「夫が拗ねちゃうから」
と花のように笑う。
仕事には厳しかった。
「コピーには、あなたの顔は貼れないわよ」
とピシャリ言われたこともあった。
見た目に自信がある自信過剰さをすぐに見抜かれてしまう。
人の心を動かす言葉をつくること。
ミキさんに教わった。
ミキさんは、異様にラッキーにこだわった。
コンペでは、占いのラッキーカラーにこだわり縁起を担ぐ。
不倫の噂が出た時、に「本当だったらよかったのに」と思った。
ミキさんは夫を愛していた。でもそんな一途な彼女が好きだったのかもしれない。
時間を稼げばどうにかなる。
このバトルロワイヤルから抜けせる。
ぼーっとパンに手を伸ばすと、女の人と手が重なった。
「どうぞ」と譲られる。
「ありがとう」
と同時に女が脇腹を刺してきた。
異様な空気に包まれて、異常者が増殖している。
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