第4話
「一時停止の看板をもっと大きくするべきだ」
事故防止を徹底してもらいたい。
スーパーの店長に連絡し、時間をもらった。
スーパー店舗の奥、狭く暗い、価格popが散乱する、テーブルと椅子。
店長は僕を迷惑そうに招き入れた。
「で、お話とは?」
「妻が車と接触しここで死亡しました。安全対策をしてください」
「以前からしてますけれど」
店長は時計を見ながら話す。
メガネをかけて、背が高い。イケメンの部類に入るだろうが、
歳は50代、白髪が混じる。
「一時停止だけの注意書きでは足りないと思いま…」
僕が言うのを遮るように、
「迷惑してるんですよね」
「えっ?」
「奥様がお亡くなりになったことはお悔やみ申し上げます。でもね、歩行者にも注意義務があるでしょ?ここで亡くなった方はあなたの奥様だけです」
「ひ、人が一人、亡くなっているんですよ?」
「特例のために看板などに経費をかけるわけにいかないんですよ。あなただって会社勤めされているんだからわかるでしょう?一番の原因は、暴走車で逃走した車。あとは、奥様の前方不確認。後ろでも見てたんじゃないですか?」
「なっ」
僕は息を呑んだ。
「あとでさ、大事な話があるんだー!!いいニュース」
そう言いながら、ミキは俺の方を向いていたのだ。
「もう、よろしいでしょうか?」
店長の声で我にかえる。
ため息をつきながら、店内に戻っていくだらしない姿…。
音楽が流れて、いらっしゃいませが連呼されている。
ここで死亡事故があったことなどまるでなかったかのように、
車で買い物にくる客。花すらおくことを許されない。玄関前。
何もかも嫌になった。特に自分のことが。
僕のせいでミキは亡くなった。
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