第3話 クレアとの出会い
この二年間で剣術は初級まで皆伝することができた。剣術とは、初級・中級・上級の過程を得て、剣聖や剣王になることができる。
それに加えて魔法は、四代元素である火・風・土・水があり、俺は火と風の初級魔法まで使いこなせるようになった。
そんな中、俺と一緒に指導を受け始めたアリシアは、すでに水の魔法で中級まで使いこなせている。
(やっぱり、ヒロインってこともあって成長速度がすごいなぁ)
俺は二年間でやっと初級なのに、アリシアは一年ちょっと中級まで使いこなせるようになっているのだから。
そう考えながら図書室へ行くと、すでにアリシアが待っていた。
「ダイくん、遅いよ」
「ごめんごめん、じゃあ始めようか」
「うん」
アリシアと二人きりの時は、敬語をなくして話すようになった。
「昨日話したけど、貴族のパーティに参加するじゃん? 緊張するよね」
「そうだね。どんな人がくるんだろうね」
「う~ん。俺と同じ階級の貴族が来るんじゃないかな? 男爵家や子爵家くらい」
俺の実家は子爵家であり、あまり階級が高い貴族ではない。だから、招待されるパーティもあまり大きいパーティではないと思っていた。
「それでもきちんとしなくちゃだね。今まで勉強してきた成果を見せなくちゃ!!」
「そうだね」
俺とアリシアはこの二年間で基礎的な領土問題とは別に、同年代の貴族の家を調べていた。誰がどの人物なのか明確にわかることに加えて、どこが今一番乗っている貴族なのか理解できる。この結果、誰と婚約しそうなのか予測ができる。
(まあ、ゲーム知識の復習をしていただけだけどね)
俺とアリシアは、今日もそれについて学んでいると、俺の服の袖を引っ張っていた。俺がアリシアのことを見ると、不安そうな表情をしていた。
「ダイくん。私のことを見捨てたりしないよね?」
「見捨てる?」
「うん。貴族のパーティに参加したら可愛い女の子もいっぱいいると思う。だから、その子に目移りして、私のことは用済みになるのかなって思って」
「そんなことしないよ。アリシアには幸せになってほしいからね」
そう。アリシアには是非とも好きな人を見つけてほしいと思っている。ギャルゲーということもあり、このゲーム世界にはイケメンや美少女が多い。
その中でもヒロインであるアリシアは頭一つ抜けているほどかわいい。
銀髪美少女。俺の計画では、主人公にはクレアと結ばれるために動くが、それ以外のことにはアリシアに見合う男性を探して、結婚してもらいたいと思っている。
最悪、主人公とクレア、アリシアの三人で幸せな家計を歩んでもらうのもありかなとは思っている。
「そ、そっか。でも私は今も幸せだよ」
「それは今だからだよ。今後のことも考えておくのはありだよ」
「う、うん」
その後、二人で調べ物をして一日が終わった。
そして、あっという間に貴族パーティ当日へとなった。
俺とアリシアは正装に着替えてパーティ会場へ向かう。その時、しおらしい表情でこちらを見てくる。
「ダイくん。ど、どうかな?」
「かわいいよ!!」
「あ、ありがと。えへへ~」
二人で雑談をしていると、あっという間にパーティ会場へとたどり着いた。俺たちは中に入ると、そこは見たことのある場所であった。
(ここ、主人公とヒロインたちが出会う場所だ)
俺の記憶が間違っていなければ、主人公がお忍びでパーティに参加していて、ヒロインたちと初めて出会うイベントがある場所だ。
(なんで気づかなかったんだ!!)
驚きを隠しきれていないと、アリシアが話しかけてくる。
「ど、どうしましたか?」
「え、何でもないよ」
(そういえば、もう二人きりじゃないから敬語なのね)
「そうですか。でもなにかあったら言ってくださいね」
「うん」
「それで、一つだけお願いをしてもいいですか?」
「ん? いいよ」
俺が首をかしげながらアリシアのことを見る。
「私のことを見失わないでくださいね。一人にしないでください」
「あ、うん。わかった」
その後、二人でパーティ会場の端っこにいると、金髪碧眼の女性が入ってきた。
(クレアだ)
実際にまじかで見ると、本当にかわいい。
「クレア様ですね」
「そうだね」
その後も続々と人が入ってくると、オーラを隠し切れない男性も入ってくる。
(あ)
この世界の主人公であり、国の第三王子のルーカス・シェド。
(確か、この時のアリシアはルーカスって気づいていないはず)
「あの人、かっこいいね」
俺がそういうと、アリシアは首をかしげながら言う。
「そ、そうですね?」
「??」
(まだ話したことがないから、この反応なのか?)
まあ、ルーカスとクレアを結ぶように動くのが俺の役目だから、アリシアがあまり関心を持たないのは良いことだけどね。
そう思っていると、部屋の明かりが消えて、パーティが開始された。
最初は主催者である伯爵家当主の挨拶。その後に食事会が始まり、ダンスをする時間になった。
(ここだ)
まず、ルーカスと誰が最初に踊るのかでクレアが闇落ちする確率が変わる。
そう考えていると、俺たちの周りに数人の男性がアリシアのことを見ていた。
「アリシア、あそこにいる男性と踊ってきなよ」
「え?」
「アリシアと踊りたそうにしているよ」
「で、でも......」
「俺は軽くあたりを見回してくるからさ」
(アリシアもここでいい男性と巡り会えたらいいな)
俺の言葉に、少し考えたそぶりを見せた後、言った。
「うん。でもすぐに戻ってくるから待っててね」
「あぁ」
俺はアリシアと男性たちがダンスを踊り始めてから、クレアとルーカスのもとへ向かった。すると、運よく二人が近いところへいた。
(よし、このままなら二人で踊るはず)
だが、一向にダンスを踊る気配がなく、あまつさえルーカスは食事を始めてしまった。
(ルーカス、何をしているんだ!!)
俺はそう思いながらクレアの元へと駆け寄る。
「突然話しかけてすみません」
「ど、どうしましたか?」
(クレアの声!! かわいい)
突然話しかけたことから、クレアは驚いた表情でこちらを見ていた。
「無礼を承知で申し上げます。もしよろしければ、一曲踊っていただけませんか?」
「え? いいですけど、あなたは良いのですか?」
「何がですか?」
「私のことは知っていますよね? はっきり言って、私に良い噂はありませんので」
(あ~。そういえばそうだったな)
クレアは幼少期から同年代の子と仲良くない。その理由として、クレアが無意識に高圧的になってしまっているからだ。
「たかが噂じゃないですか。それに今はダンスを踊る場。何もしていない私と踊っていただけるだけで幸いです」
すると、クスっと笑い出した。
「それは私もですよ」
「あはは!! では」
俺はクレアに手を差し伸べて踊りだす。
ダンスは順調に進んだ。何度か足を踏まれたが、年相応だなと感じた。
(あ~。押しキャラと踊れるなんてなんて幸せなんだ)
そして、ダンスが終わったところでルーカスを見かけたので、クレアに相談する。
「あそこに立っている男性、ダンスを踊る人がいなさそうなので、よろしければ踊っていただらどうですか?」
突拍子もないことを言っていることはわかっている。だけど、こうでもしなくちゃあなたが闇落ちしちゃう。俺の印象なんてどうでもいい。だからお願い。
「わ、分かりました?」
そう言いながら、クレアはルーカスの元へと近寄り、ダンスを踊りだした。
俺は二人がダンスを踊りだすのを見てからアリシアの元へ駆け寄ると、目のハイライトがなくなっていた。
「クレア様と楽しそうに踊っていたね」
「!!」
(見られていたか......)
だけど、しょうがないんだ。だって、一人で可哀想だったから。
「ダイくん。私のことを一人にしないって言っていたよね? それなのになんで一人にしたの?」
「え......」
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