第2話 アリシアと俺
俺が驚いていると、アリシアがこちらへ近寄ってきた。
「初めましてダイラル様。アリシア・ケルンと申します」
「あ、うん。よろしくね」
「はい。それでここにはどのような御用でしょうか?」
アリシアは首を傾けてきょとんとした表情でこちらを見てくる。
(か、可愛すぎだろ!!!!!)
クレアが押しキャラであることに変わりないが、ほかのヒロインキャラが嫌いなわけではない。むしろヒロインキャラも個性豊かで好きだ。
(はぁはぁ。落ち着け......)
深呼吸をして平常心を保っていると、アリシアが困惑した表情になる。
「わ、私何かしちゃいましたか!?」
俺はとっさに両手を横に振って否定する。
「ううん。何もしてないよ!!」
「で、ではどうなさいましたか?」
「あ~えっと。アリシアさんが可愛いなって思ったんだ。あはは......」
「ッ!! あ、ありがとうございます」
アリシアの顔はゆでだこになるほど赤くなっていた。変な雰囲気になってしまったため、話を逸らす。
「アリシアさんは俺と同い歳?」
「はい。今年で八歳です。後ダイラル様、私のことはアリシアとお呼びください」
「わ、分かった。それにしてもアリシアは偉いね」
俺の言葉にアリシアは驚いた表情を見せた。
「普通さ。八歳なら遊びたい年ごろじゃん? それなのに自身の仕事をしつつ、家の主に会ったら挨拶をする。そんなこと普通はできない。絶対に欲が出てしまう。だからすごいなって」
すると、アリシアは俺の見るまなざしが変わった。先ほどまでは友達と主の間って雰囲気であったのに対し、今は主として見てきているって感じだ。
「あ、ありがとうございます。ですが、そんなことを言ったらダイラル様の方がすごいと思いますよ。毎日剣術や魔法の稽古に加えて座学や礼儀作法の勉強、私には耐えられません」
「あはは」
(ま、まあ転生しているからね......)
俺は頭を掻いた。
「それで、どうして図書室にいるのですか?」
「あ~。それは......」
(やべ、なんて言えばいいんだろう?)
俺がそう思っていると、アリシアは真剣なまなざしでこちらを見てきていた。
(あ!!)
「俺って長男だからいずれこの家を継がなくちゃいけないんだけど、あまりにも知識がなさすぎるんだ。それこそ貴族にはどのような人材がいるのか。他国との関係はどうなっているのか。だから、図書室で今のうちに勉強しておくんだ」
「そ、そうなのですね」
(わ、我ながら良い言い訳ができた)
こう言っておけば、俺がクレアのことを調べ始めても疑われることはない。
(いいこと思いついた!!)
「アリシアも一緒に調べごとをしない?」
「え?」
「俺と一緒に調べごとをしたら知識がつくし、いいと思うんだよね。役に立たない知識なんてないしね」
「で、でもお仕事が......」
「あ~。それは俺がお父様に言っておくよ。どうかな?」
戸惑いの表情を見せていたが、何か決意が固まったのか頷いた。
「お、お願いします」
「じゃあ、今日からとは言えないから明日からよろしくね」
そして、一旦アリシアとは別れた。
(よしよし)
もしアリシアと一緒に勉強することができて、最終的にはクレアと主人公を結ばせる計画に手を貸してくれるなら、ライバルが減るから角度がグッと上がるはず。
(まずはお父様に相談しておかなくちゃ)
俺はそう思い、すぐさま図書室を後にしてお父様に相談しに行った。
案の定、すぐに了承をもらうことができたため、アリシアへ伝えに行く。
屋敷の中を歩いていると、キッチンで食器を洗っているアリシアを見つけた。
「アリシア!!」
俺の言葉に驚いた表情を見せながら、こちらへ近寄ってくる。
「ダイラル様。どうなさいましたか?」
「許可を得ることができたから、明日からよろしくね」
「は、はい!!」
その後、軽く今後のことを考えて次の日になった。
俺はすぐさま図書室へ向かうと、すでにアリシアが座っていた。
(早いなぁ)
今は朝八時。それなのにもういるなんて。
「おはよう」
「おはようございます」
その時、アリシアがあくびをした。
(あ......)
「ごめんアリシア」
「え?」
「きちんと時間を伝えていなかったね。明日からはこの時間に集合ってことでいいかな? 予定が入っていたら前日に伝えるからさ」
「あ、ありがとうございます」
「じゃあ勉強を始めようか」
俺はそう言って、図書室にある書物をアリシアと一緒に調べ始めた。
★
二年後。俺とアリシアはある程度情報を集めることができた。それに加えて、アリシアは俺の専属メイドとして扱うこととなった。
そんな時、お父様からある一枚の手紙を渡される。それは、貴族パーティへの招待状。
「アリシア、来週貴族パーティがあるんだよね......」
「そ、そうなのですね」
「アリシアも一緒に行くよね?」
「はい。是非いかさせていただきます」
(どんな人が来るんだろう??)
この時の俺は、貴族パーティが自身にとって重要なイベントであることを知る由もなかった。
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