第6話 同好会はやることが無いらしい
5月中旬。無事に同好会への入会が認められ、今日から活動が始まる。
くれちゃんはとてもワクワクしている様子で、朝からテンションが高かった。
「楽しみだなー!な、舞雪!」
「そうだね。愛桜ちゃんはどう?というか、習いごとは今日無いの?」
「ええ、予定を調整しておきましたわ。初日ですし、折角なら3人で行きたいですもの。」
「愛桜ちゃん……!」
「愛桜……見直したぞ!」
「見直される程低く見られていたのですか……。」
頭を抱えながら苦笑いを浮かべる愛桜ちゃんに、屈託の無い笑顔を浮かべるくれちゃん。
大丈夫、くれちゃんは多分悪気があった訳ではないから……。
(^ω^)(≧∇≦)(@_@)
放課後、私とくれちゃんは部室の前に来ていた。愛桜ちゃんは学級委員長の用事で遅れるそうだ。
「たのもー!」
くれちゃんが勢いよくドアを開け放つ。
そこには、本を読む五木先輩の上に座ってご機嫌な四葉先輩がいた。
「あ!……後輩ちゃん達、来てくれたんだね!」
今の微妙な間……。絶対私達の誰が来たのかって分かってないよね。
でも、立場が逆だったら私も分からないだろうな。
「うん!あ、アタシ紅葉!」
「私は舞雪です。」
そんな空気を察したのか、くれちゃんが名前を言ったので便乗する。
四葉先輩は、分かってましたけど?感を出しているが、見分けがつかないのはバレバレだ。
「誤魔化し方が露骨すぎるぞ、メグ。」
「むー、だって皆顔同じに見えるんだもん!そう言ういっちゃんは分かるの?」
「もちろん。熊のヘアピンが舞雪、元気印が紅葉、眼鏡の委員長が愛桜だ。どうだ、舞雪。」
「せ、正解です。」
さ、流石五木先輩だなぁ……。
元々がイケメンだから、多分意図していなくてもキメ顔になっちゃうんだろうな。
でも、四葉先輩とのラブラブ感と相まって、なんか若干腹が立つ。
「メグちゃん先輩、いっちゃん先輩!今日は何するんだー?」
「えっ、今日?昨日水やりしちゃったし……。」
「雑草は一昨日抜いたな。」
「うん、特に無いよ!お花は手をかけすぎると枯れちゃうから、最低限の最上限を心がけてるんだ。」
「そっか……。」
あ、みるみるうちにくれちゃんが萎れていく……。
それを見た四葉先輩が、慌てたように五木先輩の膝から降り、近くの棚の引き出しから何かを取り出すとくれちゃんに手渡した。
「ごめんね、折角張り切ってくれてたのに……。これ、構内の花壇の地図とデザインのテーマが書いてあるの!愛桜ちゃんが来たら見てくるといいよ。」
四葉先輩が渡してくれた構内地図には花壇の場所に付箋が貼ってあり、テーマと思しき言葉が書かれている。
「地図か!宝探しみたいだな、舞雪!」
「うん!四葉先輩がデザインしたのかな……。」
「そうだよ。でも、ここと、ここは、いっちゃんがデザインしたんだ!いっちゃんのデザイン、私大好きなんだ〜!」
「褒めすぎだぞ、メグ。だが、わたしもメグのデザインした花壇は好きだ。控えめに言って、世界一だな。」
「いっちゃん……!」
あ、まずい。先輩方が2人だけの世界に入り込んでしまう。
と、思った瞬間、ドアが開いて愛桜ちゃんが入ってきた。これでこのラブラブゾーンから離脱できる!
「遅くなりまし……。」
「愛桜ちゃん!」
「おお、愛桜!今から宝探し行くんだー、愛桜も一緒に行こうぜ!」
「た、宝探しですの?」
「違う違う、今から花壇を見て回るの。これ、地図だから。愛桜ちゃんに持ってて欲しいな〜。」
信用してない訳ではないが……落ち着きの無いくれちゃんに地図を持たせておくと、落としたり破いたりしそうで怖いのだ。
「まぁ、よろしくてよ。」
「じゃ、メグちゃん先輩といっちゃん先輩、行ってくるな〜!」
「うん、行ってらっしゃい!」
笑顔の先輩2人に見送られ、部室を後にした私達は、まず校門の花壇へと向かった。
「ここは確か、四葉先輩がデザインしたって言ってた花壇だよね。」
「テーマは『活力』……ですわね。」
「登校した瞬間から元気が貰えそうな、やる気の出るデザインだな!」
「私、この色合い結構好きかも。」
校門を後にし、生徒棟の前へ向かう。私達のクラスの前だけ花壇があるのだ。日当たりとかの関係かもしれない。
「ここも四葉先輩デザインだよね。」
「テーマは『青空』ですわね。」
「アタシ、この花好きなんだよなー!良くないか?可愛いだろ?」
「ええ。紅葉さんはとっても可愛いですわよ。」
「そんなこと言ってねーよ!」
次は特殊教室棟の横だ。いわゆる移動教室とかで使う教室があったり、図書室があったりする。図書室には花壇の写真が何枚か貼ってあるらしい。
「ねえ、愛桜ちゃん、ここって五木先輩がデザインしたっていうところじゃない?」
「あら、本当ですわね。テーマは……『メグと過ごした年月』……。」
「いっちゃん先輩っぽいな〜……。でも、ちょっと変わってるけど、確かに何かは伝わってくる気がするな!うん、何かは!」
何だか凄みのある花壇を見たあと、また花壇を数カ所回り、感想を言い合いながら部室へと戻った。
「ただいま!」
「戻りました。」
「ですわー。」
ついノリで愛桜ちゃんの口調を真似てみる。一瞬驚いた顔をした愛桜ちゃんだったが、すぐにいつもの表情へと戻った。
「ま、舞雪さん、それは誰の真似ですの?」
「愛桜ちゃんの真似〜。いいなぁって思ってさ。」
「けっこー似てたな!」
「……くれちゃん、私達、顔もそうだけど声も似てるって忘れてない?」
「そーだった!ですわー!」
「うぅ、口癖が災いしましたわ……。」
それ、口癖だったんだ。でも可愛いしいいと思う。直そうとか言い出さないことを祈ろう。
四葉先輩と五木先輩は、紅茶を飲みながらお菓子をつまんで談笑していたらしい。
「アタシもお菓子食べる!」
「いいよー、はい。」
「あむっ!ありやと!」
四葉先輩にチョコレートを食べさせてもらってご満悦のくれちゃんと、私の横で悔しがっている愛桜ちゃん。
愛桜ちゃんのこの構図、よく見る気がするな。
「歓迎会の準備してたの!大したものは用意できなかったけど、お菓子パーティーくらいならできるよ!」
「ようこそ、花壇同好会へ。」
ポカーンとしていると、くれちゃんが私と愛桜ちゃんの手をとって先輩の方へと引っ張ってくれた。
どうやら先輩達とも仲良くなっていけそうで良かった。
「これから、私達3人をよろしくお願いします!」
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