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けれどもそれは、決してレヴィの両腕に、引き裂かれたからではなかったのだ。
そうではなくて、カウントダウンのゼロをきっかけに、一気にレヴィの三倍ぐらいまで膨れ上がったルキンが、全身をフットに武装化してもらったその直後、とある目的のために、自分から顎を開ききったためだったのだ。
そしてその目的というのは——
〈な……はじめから、私を呑み込むつもりだったのか……!? 幼体どもの命を犠牲にして……!?〉
——そう、たった今レヴィの言ったことこそが、ルキンの真の目的で、そしてそれこそがみかんが立てた、『ぼくらの命を、引き換えにする作戦』でもあったのだ。
そうしてフットのシールドで武装化ならぬ、コーティングしたルキンのお腹の中に、レヴィをぴっちりと完全に閉じ込めて、ルキンとフットに、可能な限り小さくなってもらって、レヴィをみかんとぼくごと、小さく小さく、ものすごく小さく圧縮してもらって、目に見えないくらいのミクロサイズではあるものの、圧倒的な温度と磁力と重力を持つ、中性子星を造りだしてもらうことが。
そしてその最強のシールドでコーティングされた中性子星を、火星の地下の奥の奥の、そのちょうど中心の地点に、『永久に封印』することこそが。
〈さ、させるものか……!〉
言ったレヴィが、ドンッとルキンよりも大きくなったようすが、上下があべこべになっている視界の端に見えたけれど、瞬時にルキンが、やっぱりその三倍ぐらいまで、ドドンッ! とわずか一瞬で大きくなったことが、空間の膨張具合でわかった。
——直後。
ギャバウッ! と口の内側をくねらせながら、完全にレヴィをぼくらごと丸呑みにしたルキンが言った。
〈レヴィよ。分裂した今だからこそ、オレさま——いや、『我々』には、お前の気持ちがわかる。己のおかした、罪の重さがはっきりとわかる。お前に復讐心を抱かせたのは、誰でもない、我々の責任だったことが……すまなかった〉
一転ギューッと縮み始めたルキンのお腹の中で、めちゃくちゃにもがいているらしきレヴィが応える。
〈い、今さら、何を……〉
ぼくはルキンとレヴィの会話を聞きながら、もがいているレヴィからみかんを守るべく、レヴィを背にしてみかんの方を向いた。
ルキンがまだ完全に口を閉じきっていないおかげで、レヴィとぼくらの位置関係だけは、どうにか把握することができていたからだ。
どうせすぐに押しつぶされて死んでしまうのだけど、みかんに怪我をさせて、余計な痛みを感じてほしくなかったからそうしたのだ。
と。ルキンの口が完全に閉じられたらしく、まったく何も見えなくなった。
〈さあ、レヴィ〉とルキンが言った。〈共に行こう——行かせれくれ。我々のマスターがそう言っている。望んでいるのだ〉
伝わるはずもないのだけれど、ぼくはルキンの言葉に頷いた。
〈ど、どこにというのだ……!?〉
〈——はじまりの、場所だ〉
次の瞬間だった。
ぐ、ぐおおおおおおおっっっ! というそれまで以上に暴れ回るレヴィの怒号が、すぐ後ろで響き渡った。
その際の衝撃で、ぼくはみかんの手をうっかり離してしまったけれど、でももう片方の手は、まだしっかりと握り続けている。
そしてぼくたちは、どんどんどんどん圧縮されながら、火星の真ん中めがけてぎゅんぎゅんぎゅんぎゅんと落下し始めて、今もまだ落ち続けている。
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