3-17


   ⌘


 覚悟を決めたぼくは、レヴィから一旦間合いを取るべく、猛スピードで泳いでいるルキンに尋ねた。

〈ルキン、昨日みかんが言った作戦、聞いてた?〉

〈ああ、聞いていた〉

〈決行するよ。いい?〉

〈マスターのコマンドならば、いかなるものど〉

〈ありがとう〉

 ぼくはルキンに、具体的なコマンドは、そのときそのときで分けてするから、その通りにしてとお願いした。

 先にいっぺんにコマンドしてしまうと、作戦の詳細を、レヴィに聞かれてしまうからだ。

〈心得た〉とルキンが言った。

「お願い——準備はいい? みかん」隣りでぼくとおんなじうつ伏せの姿勢になっている、みかんにぼくは確認した。

「大丈夫だよ、もちろん」

「おばさんに、最後の電話とかメール、しないでもいい?」

「うん。しない。ミズトは?」

「ぼくもいい」

「でも、ひとつだけやっときたいことがあるかも」

「なに——」

 ——と。

 みかんがぼくの頬っぺたに、キスをした。

「終わったよ、やりたいこと」

 目の前で組んだ両腕に、赤くなった顔の下半分をうずめながらみかんが言った。

 ぼくは一度、腕立て伏せをするようにして身を起こすと、みかんの曲げられている片腕に自分の片腕を通して、またうつ伏せになった。

「ミズト……?」

 みかんがぼくを見た。

 ぼくもみかんを見た。

「これでぼくたち、離れることはないよね」

「……うん」

 ぼくは潤んだ瞳のみかんを、じっと見つめた。

「——みかん。救おう、世界を。火星と、地球のみんなを。ぼくたちで」

「うん!」

「ルキン、コマンド! まずは、急上昇だよ!」

「高さはどうする?」

「行けるとこまでだよ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る