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⌘
ぼくがコマンドを出したその直後、ルキンがレヴィとおんなじスターシップサイズまで、さらにぐんぐんと巨大化しながら、そのまま突進攻撃の体勢に入った。
今度のレヴィは、直径二十㎞以上もある衛星フォボスの全部を使って、ほのめかした通りに地球を攻撃しようとしているところだったけれど、どうにか間に合ったようだったし、ルキンの言う通り、隙を突くこともできそうだった。
と。作戦通り、ルキンの突進攻撃が見事肩にヒットして、結構なダメージを与えることができたようだ。
歪んだ雄叫びと共に、レヴィが斜め後ろに飛んでゆき、背中が衝突した電波塔が、ぐにゃりと折れ曲がったからだ。
ただ問題は、ぼくの頭部にも、痛みが走ったことだった。
ルキンが鼻先をレヴィに衝突させたその瞬間、実際に衝突したとしか思えないすさまじい痛みが、ゴッとぼくのおでこを襲い、たまらずうぎゃっと叫んでしまったほどだった。
おでこに両手を当てながら痛がっているぼくに、レヴィから距離を取っているルキンが声をかけてきた。
〈だいジだ。架空の痛みに過ぎんし、オレさまが生きている限り、死にはせん〉
〈でも、死ぬほど痛いんだけど……なんなのこれ〉
〈オレさまがダメージを負えば、マスターにもダメージが伝わる。単純な話だ〉
〈……そうなの? でも今まで一度だって、そんなことなかったよね?〉
まだ引いてくれないおでこの痛みを感じながらぼくは尋ねる。
〈当然だ。これまでは、あまりにも楽勝だったからな〉
〈そうなんだ……〉そこでハッと思い至ってぼくは尋ねる。〈だったらみかんは? みかんも痛みを感じてたの? フットが攻撃を防いでたとき〉
〈むろんその通りだ〉
「そんな……」
つい声に出してぼくは言っていた。
首長竜とモササウルスがシールドに噛み付いたときの、みかんの苦しそうな顔を思い出しながら。
QUAを流してもらってもすぐには回復しきることのなかった、さっきの苦しそうなみかんの顔を思い出しながら。
それらの苦しそうな表情は、どっちも恐怖によるものではなく、純粋な痛みによるものだったのだ。
にもかかわらず、みかんはそれを一言も言うことなく、じっとひとりで我慢していたのだ。
「みかん……」
ぼくはおでこからパッと手を離した。
「だったらこれくらいの痛みで、泣き言なんて言ってられないね……ルキン、再攻撃だよ! 何度でもね!」
「ああ、引き受けた」
ルキンも声に出してそう言うと、ほとんど優雅と言ってもいいほどの、捻りの入った特大宙返りで方向転換をしたあとで、またレヴィ目がけて突進攻撃を開始した。
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