2-23
⌘
〈ミズ、気をしっかり持つヨ〉
〈? レヴィのこと?〉
ふいに話しかけてきたルキンに、声を出さないままでぼくは答えた。
会話がみかんにも聞こえているのかなと思ったけれど、みかんだったら別にいっか、と思いながら。〈それなら、大丈夫だよ?〉
〈ルキンが言っているのは、明日のことだヨ〉
〈明日のこと?〉
〈かーさまはもういないことを、忘れないでだヨ〉
〈……でもレヴィは、お母さんなんだよね?〉
〈心までは、そうじゃないヨ〉
〈心までは……? ねえ、前から思ってたけど、ルキンには未来とか、本当のことが見えたりするの?〉
〈少しだけだヨ〉
〈見えるんだね?!〉
〈と言うよりは、みんな気付けないだけで、本当は見えてるよ。ルキンはたまたま、気付けるだけだヨ〉
〈そうなんだ?〉
〈それに、間違うこともあるヨ〉
〈それでもすごいよ、未来が見えるなんて……! ねえ、二十四時間経ったら、全部思い出して、ちゃんと話せるようになるんだよね?〉
〈……だヨ〉
と、どことなくためらいがちにルキンは答えたけれど、そのことをはっきりと認識できないままにぼくは続けた。
〈ぼく、ルキンにいっぱい訊きたいことがあるんだ。だからそのときがきたら、教えてくれる? あと、十八時間後くらいだよね?〉
〈いいヨ〉
〈あ、とりあえずこれだけは今教えて。知ってたら。レヴィってどういう意味なの?〉
〈Livyatan melvillei《レヴィアタン・メルビレイ》〉
やたらといい発音で言ったルキンにぼくは尋ねる。
〈それってあの、レヴィアタン・メルビレイのこと……?〉
〈その、レヴィアタン・メルビレイだヨ〉
レヴィアタン・メルビレイとは、古代の地球の海に住んでいた、クジラの祖先のことだ。
あまりにも巨大で獰猛なそのイメージが、伝説の海獣リバイアサンと、メルヴィルという大昔の作家が書いた、
その見た目を一言で言うと、牙のある、巨大なマッコウクジラというところだろうか。
メガロドンと同じ時代の海に住んでいて、身体の大きさや力も同じくらいだったことから、メガロドンの唯一のライバルとされていたらしい。
つまりレヴィは、レヴィアタン・メルビレイのクアットを持っているということなのだろうか?
その辺を深掘りしたかったけれど、ルキンはもう、姿を消したあとだった。
そしてぼくたちは、基地に到着した。
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