2-18
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やがてぼくらがたどり着いたのは、とある大学病院だった。
「レヴィの身体の持ち主は、入院してた人なの? それとも、お医者さん?」
夜間専用の入り口からミニエントランスへと入りながら、叔父さんにぼくは尋ねた。
「どちらかと言うと、お医者さんに近いかな」
叔父さんはエントランスの長椅子の前で立ち止まりながらそう答えると、なぜかおもむろにぼくのキャップを取って、脱いだ自分のキャップをぼくに被せた。
「え、何?」とぼくは尋ねる。
「少しの間、帽子を交換しよう」と叔父さんは答えた。「赤い帽子を被ってちゃ、これから会いに行く人に失礼だからね」
叔父さんはぼくの帽子の内側を目を細めて見つめながら、そんなわかるようなわからないような理屈を言った。
そんなことを言ったら、赤いスニーカーはいいのだろうか?
とそういぶかんでいるぼくに叔父さんが続ける。
「それよりもミズトくんとみかんちゃん。君たちはここで、待っててもらえるかな」
「え、ここまで来たんだから、一緒に行くよ」
とすかさず言ったぼくに、いや、と叔父さんが応える。「ここで待っててくれ。結果が出たら、きちんと知らせるから」
結果とは、どういうことなのだろうか?
わからなかったけれど、思いのほか強い口調で叔父さんが言ったために、それ以上食い下がることができなかった。
そのあと叔父さんは、ぼくのキャップを被らずに、なんだか骨董品の茶碗でも扱うかのように逆さにして持ったまま、暗い廊下の先へと消えて行った。
そんな叔父さんを見送ったぼくたちは、長椅子に並んで腰かけると、一体どういうことだろうね、くらいのことを言っただけで、特に何を話すでもなく、叔父さんの帰りを待った。
まるで大きなお墓の中みたいな不気味な印象をそれとなく放っている、病院の薄暗いミニエントランスで。
ルキンは当然、ハイドした状態で。
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