2-16
⌘
ぼくの願いが通じたのか、思いの外時間が経ったあとでお父さんがぼくらを呼びに来て、ぼくらは一階に戻った。
戻ってみると、医療用の手袋をはめた叔父さんが、なぜかジップロックの小さめの袋を片手に膝をついて、ゴミ箱を漁っていた。
かと思っていると、ふいに、よし、と言いながら立ち上がり、指先で挟んでいた何かを袋の中に入れ、その袋を白衣の内ポケットの中に、大事そうにしまった。
袋に何を入れたのかまでは、叔父さんの身体が邪魔になって見えなかった。
とそこでこっちを振り返った叔父さんが、手袋を外しながら言った。
「悪いがミズトくん、これから一緒に出かけようか」
「これから?」
「ああ。雄人さんと話したんだが、レヴィの身体の持ち主に、心当たりがあってね。それを確かめにいきたいんだ」
ということはやっぱり、レヴィは誰かの身体を取ったというみかんの説が、当たっていたようだ。
「でも、なんでぼくが?」
「ボディーガードになってほしいんだよ。ルキンさん——いや、ルキンに」
「でも叔父さん、酔いは大丈夫なの?」
出かけるとしたら、叔父さんがビートルを運転することになるだろうと思ったぼくはそう尋ねた。
「それがまったく大丈夫なんだ」と叔父さんは言った。「レヴィにもらった情報は、QUAに混ぜられていたということだから、それと関係しているのかもしれないね。今はいつも以上にスッキリしてるくらいだよ」
「それならいいけど……。お父さんは?」
「雄人さんは、みかんちゃんのお母さんのこともあるし、この家の地下室で待機しておいてもらうよ。もうすぐ軍も来るはずだからね」
「あの、わたしも行っていいですか?」
と、そこで叔父さんに名乗り出たのは、みかんだった。
「……みかんちゃんもかい?」
いぶかる叔父さんに対して、ぼくはみかんを援護するべく、レヴィことわふなちゃんとみかんの関係を、みかんと二人で、あらためて叔父さんに説明した。
「……そうか。レヴィに対する、みかんちゃんの気持ちはわかったよ」と叔父さんは言った。「しかし万が一また敵が来た場合、みかんちゃんのシールドがなければ……」
とそのとき、ルキンがぼくに話しかけた。
〈だったら地下室の壁と床に、ルキンが多めにQUAを流すよ。そうすれば、さっきレベルの敵は当分入れないよ。それにレヴィの目的は、ミズトとみかんだから、離れ離れにならない方がいいヨ〉
なるほど、さすがはルキンだ。
ぼくはすぐに叔父さんに、そのことを伝えた。
「そうか」と叔父さんが応える。「それだったら安心だね。じゃあ一緒に行こう」
「どれくらいで戻って来れそうだ?」
とお父さんが叔父さんに尋ね、いまいちよくわからない内容のことを叔父さんが答える。
「今の技術なら、三分もあれば充分ですので、ほぼ往復時間の、一時間程度かと」
「わかった。それでは、頼むよ」
「はい。——よし、じゃあ出発だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます