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「どこに行くの?」

 車道側のリアシートから、ようやくぼくは叔父さんに尋ねた。

 すると叔父さんは思い出したかのように、一度ビートルを路肩に停めてから後ろを向くと、ぼくと隣りに座るみかんに、スマホを出すように要求した。

 わけがわからなかったけれど、歩道側のリアシートに座るみかんのおばさんと、助手席のお父さんが、言う通りにしなさいと言って、ぼくらはスマホを差し出した。

 叔父さんは、ぼくの腕時計型の白いスマホはすぐに返してくれたけれど、みかんのタブレット型の黒いスマホの方は、あー、やっぱりな、などと独りごちながら、少しの間いじっていた。

「もしかして、盗聴アプリ?」

 わふなちゃんのことを思い出しながらぼくが訊くと、おー、さすがはおれの甥っ子だな、鋭い、と言ってから叔父さんは、スマホをみかんに返した。「盗撮機能と発信機も兼ねてる、ヤバイやつだ」

「……ねえ叔父さん、何が、どうなってるの?」

「そうだなあ」と、他人ごとのように叔父さんは言った。「とりあえず詳しいことは、おれの研究所に行って、飯でも食ってから話そう。それまでお腹、我慢できるか?」

「できるけど」

「みかんちゃんも?」

「はい、できます」

 そう答えたみかんの手には、ルキンが倒してQUAを吸い取った、元ホオジロザメの和金がゆらゆらと泳ぐ、金魚鉢が持たれている。

 鉢の中には水が入っていないにもかかわらず、誰も不思議がるようすはない。

 大人たちは誰も、なんにも気が付いてはいないようだ。

 きっとお金か世間体のことで、頭がいっぱいなのに違いない。

 みかんのおばさんのことはよく知らないからわからないし、お父さんや叔父さんは、割とそういう大人じゃないと思っていたはずなのに、今一緒にいる三人の大人は、全員なんだか、そういうタイプの大人に見えた。

 妙に溌剌とした声で、年代物のスティック手榴弾みたいなサイドブレーキを下ろしながら叔父さんが言った。

「よし、とにかくまずは、研究所を目指そう」

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