1ー19
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向こうで倒れているわふなちゃんを抱えて下山する前に、ぼくはみかんのおばさんに、電話をかけることにした。
腕時計型のスマホの画面を指先で操作して、おばさんの電話番号を呼び出して発信する。
通話がつながるなりおばさんが言った。
「ミズトくん?」
「はいそうです。みかんと合流したので、これから一緒に帰ります。あ、あと、わふちゃんも」
少し間を置いておばさんが尋ね返す。
「わふちゃんも?」
「はい。あの、わふちゃんを、怒らないであげてもらえますか? お姉ちゃんが心配で、ついてきただけなので……」
また少し間を置いてからおばさんが言った。
「——ねえミズトくん」
「はい?」
「わふちゃんって、誰のこと?」
おばさんの言葉に、思わず、へ? と間抜けな声を出してしまったぼくだった。
「わふちゃんはわふちゃんですよ」ぼくは言った。「みかんの妹の、わふなちゃんです」
今度は少し長めの沈黙のあとで、慎重な声でおばさんが言った。
「……ねえミズトくん、みかんは、ひとりっ子よ?」
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