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 向こうで倒れているわふなちゃんを抱えて下山する前に、ぼくはみかんのおばさんに、電話をかけることにした。

 腕時計型のスマホの画面を指先で操作して、おばさんの電話番号を呼び出して発信する。

 通話がつながるなりおばさんが言った。

「ミズトくん?」

「はいそうです。みかんと合流したので、これから一緒に帰ります。あ、あと、わふちゃんも」

 少し間を置いておばさんが尋ね返す。

「わふちゃんも?」

「はい。あの、わふちゃんを、怒らないであげてもらえますか? お姉ちゃんが心配で、ついてきただけなので……」

 また少し間を置いてからおばさんが言った。

「——ねえミズトくん」

「はい?」

「わふちゃんって、誰のこと?」

 おばさんの言葉に、思わず、へ? と間抜けな声を出してしまったぼくだった。

「わふちゃんはわふちゃんですよ」ぼくは言った。「みかんの妹の、わふなちゃんです」

 今度は少し長めの沈黙のあとで、慎重な声でおばさんが言った。

「……ねえミズトくん、みかんは、ひとりっ子よ?」

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