第2話 母ちゃんどこ行くにゃ


「いつまで笑ってるニャ」

「ヒヒヒヒッ!いや!だってさ〜見られた〜!みたいに焦ってるのに こ、零したニャ!とか誤魔化してるし慌てて舌火傷して猫舌かよ!ってもう色々ツッコミたいんだよ私はクフフフフ!ほんとウケるっす!」


 そう猫耳獣人族だからといって猫舌というわけでもない。これも猫耳ジョークである。


 でもなんかムカつくニャ


「人間来てたんじゃなかったかニャ?」

「あ〜そうだエレナを呼びに来たんだよ、それ食べたら来てよ」

「私をニャ?」


 トンジルを溢してしまったご飯をかきこみ村の集会所に母ちゃんとやってきた。

 人間と話をするのは初めてな気がする。


「連れてきたぞ、エレナだ」

「エレナにゃ」


 言葉遣いとか作法とかわからないニャ、そこは許して欲しいニャ。

「セレナ殿、こちらの御方がエレナ様ですか?セレナ殿の妹君という事で宜しかったですか?」


 あ、妹とか紹介したのか母ちゃん。

 まあ母ちゃん娘の私からみてもキレイだしなんかこんな小娘が村の纏め役やってて大丈夫か?って思うくらいには見た目が若い。

 若すぎる。でも人間が来るからって見栄はるのは良くないかな


「そりゃ嬉しいっすね!あ……いや、ごほん!この子は私の娘だよ〜!私に似て美人だろ〜?」

 見栄をはってたわけじゃなかったニャ


「ええ……ってことはセレナ殿のおとし……いえなんでも……はいとてもお綺麗でビックリしました。」


 キレイって誰がニャ?母ちゃんはキレイにゃ


「いいよ〜、歳は見た目通りじゃないさ!ここの村の皆は知ってるし猫耳生えてるけど私の母親がハイエルフで父親が猫耳獣人だからハーフなんだよね〜。だから歳とらないの」


 私、知らニャかったニャ!?

 母ちゃんハイエルフとハーフ?じゃあ、私はハイエルフのクォーターニャ……?


「あ!私知らニャかったニャ!?って顔してるなエレナ〜!言ってなかったもん、いや〜良い顔みれたわ〜」


 娘に教えてニャいのはどうかと思うけどね!


 母ちゃんの身体能力が低いのはハイエルフの血が混じってるからなのかもしれない。だから魔法があんなにも得意っていうのも頷ける。


 まあ私の方が恐らく獣人としての血が濃いのだろう。私が回避タンクをやるのは必然だった、ということだ。


「ちなみにエレナは殆どハイエルフだぞ。猫耳と尻尾あるから猫耳獣人でもあるけどな。ちなみに私のこととろいと思ってそうだけど狩りの時は後衛に回ってるだけだし身体能力エレナより高いからな〜。」


 は?父ちゃんみたことニャいけどハイエルフ?私は獣人のクォーターってことニャ……でも母ちゃんはとろいにゃ!


「母ちゃん、全然動かにゃいし魔法ばっかりだったニャ!嘘つくにゃ!」


「嘘じゃないっすも〜ん、でも魔力や魔法の才能はエレナの方が上だよ〜。無自覚かもしんないけど魔力で身体強化してるんだよエレナは。多分、素だとだいぶ弱いよ。殆どハイエルフだからね」


「人間が来たからいいとこ見せようと負け惜しみニャ!」


「じゃあさエレナここに魔力を封じる魔道具があるぞ。そして発動するぞ。私はここでもバク転くらいできるし天井にも飛び乗れる。これが出来るかエレナ」


 ハーフとは言え母ちゃんはこのくらいのことは出来るだろう。私に比べたら全然だけどね。


「そんなの簡単にゃ!」


 そう言ってバク転をする


「あれ?ニャ〜〜!!!」


 私はそのまま後頭部を打ちつけ意識が飛びそうになった。


 痛いニャ!どうしてニャ?

 後頭部を打ちつけ涙を流していた。

 今までバク転くらい出来ていたのに魔力を封じられた途端に出来なくなったみたいじゃないか?

 

 ということはニャ……


「それが本当のエレナだよ。だから自分のことをいざと言うときの為に知っておいて欲しいんだ。っす……」


 だったらどうして

「なんでそんな知らなかったことばかりいま話すにゃ!」


 人間が来てるのに……

 人間が来てるのに?

 人間が来たから?


 母ちゃん、どこか行くのか?


 母ちゃんが私を抱きしめてきた。

 あ、これ……母ちゃんどこか連れてかれるのか?


 小さい頃からの母ちゃんとの思い出が甦るにゃ……


 母ちゃんどこにいくにゃ?私も行くにゃ……


「ごめんエレナ、もっと色んなこと教えておけばよかったよ。」


 私の両目から涙が止まらにゃい……どうやったら止まるにゃ……


「私からお話ししましょう。私は枢機卿をしておりますクレアと申します。エレナ様……」


「お前は……いや改めて初めましてにゃ、娘のエレナにゃ……う、う、う、グス、母ちゃんを……母ちゃんを……宜しくお願いしますニャ……グス……うにゃ〜ん」


「は?」


「出来れば……ぐす私も連れて言って欲しいニャ」


「え、え、え、エレナ様?落ち着いて聞いてください」


「エレナは本当に面白いな〜、でもそんな愉快なエレナを見れなくなっちまうのは残念だな〜」


 母ちゃんがおどけたふりして笑顔にゃ。

 私が泣いてるからにゃ……

 母ちゃんは優しいにゃ……でも私を連れて行ってくれにゃいのか……


「この村から私達と旅立つのは神託の巫女候補、わかりやすく言えば聖女候補であるエレナ様です。」


 にゃ………?にゃんて?今にゃんて?



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